アシナガバチの種類は?日本に生息する11種の特徴・見分け方・駆除方法を解説
この記事は約45分で読み終わります。
このコラムで分かる事
- 日本に生息するアシナガバチ11種類の特徴
- 体の大きさや色・模様による種類の見分け方
- 巣の形や作られた場所から種類を判断するポイント
- アシナガバチの巣を安全に駆除する方法
- アシナガバチに刺されたときの正しい対処法
アシナガバチは1種類の蜂を指す名称ではなく、スズメバチ科アシナガバチ亜科に属する蜂の総称です。日本には、セグロアシナガバチやキアシナガバチ、フタモンアシナガバチなど、3属11種類のアシナガバチが生息しています。
種類によって、体の大きさ、黄色や黒色の模様、脚や触角の色、生息地域、巣を作りやすい場所などが異なります。ただし、色や大きさには個体差があるため、ひとつの特徴だけで種類を断定するのは困難です。蜂の姿だけでなく、見つけた地域や巣の形、巣が作られた場所なども確認する必要があります。
アシナガバチは、スズメバチと比べると攻撃性が低い傾向にありますが、巣へ近づいたり振動を与えたりすると、巣を守るために攻撃してくることがあります。種類を確認しようとして巣へ近づくのは避け、安全な距離から観察してください。本記事では、日本に生息するアシナガバチの種類や特徴、見分け方、巣を駆除する方法、刺されたときの対処法を解説します。
目次
アシナガバチとは?共通する特徴

アシナガバチには複数の種類がありますが、体形や飛び方、巣の構造には共通する特徴があります。見つけた蜂がアシナガバチかどうかを判断するには、細長い体や長い脚だけでなく、飛んでいるときの姿や巣穴の見え方も確認することが大切です。
アシナガバチは細長い体と長い脚を持つ蜂
アシナガバチは、胸部と腹部の間が細くくびれた、すらりとした体形をしています。名前のとおり脚が長く、特に後ろ脚が体の後方へ伸びていることが特徴です。多くの種類では黒色や褐色を基調とした体に、黄色や黄褐色の模様が入っています。
スズメバチも同じスズメバチ科に分類されますが、アシナガバチよりも胴体が太く、頭部や胸部に厚みがあります。ミツバチは丸みのある体に細かな毛が多く、アシナガバチとは体の輪郭が大きく異なります。

ただし、セグロアシナガバチやキアシナガバチのように比較的大型の種類もいるため、体が大きいという理由だけでスズメバチと判断することはできません。反対に、コアシナガバチやオキナワチビアシナガバチのような小型種もいます。種類を見分ける際は、体形、大きさ、模様を組み合わせて確認しましょう。
脚を垂らしながらゆっくり飛ぶ
アシナガバチは、長い後ろ脚を下へ垂らしながら、ふわふわと比較的ゆっくり飛ぶ傾向があります。細長い体とぶら下がるように見える脚を確認できれば、アシナガバチかどうかを判断する手掛かりになります。
スズメバチは、脚を目立たせずに直線的かつ素早く飛ぶことが多いため、飛び方にも違いがあります。ただし、蜂が人や外敵を警戒しているときや、風が強いとき、餌を追っているときなどは、通常とは異なる飛び方をする場合があります。
飛び方を確認するために蜂を追いかけたり、進行方向へ近づいたりしてはいけません。巣の付近では、働き蜂が警戒して周囲を飛び回っていることがあります。何匹もの蜂が同じ方向へ出入りしている場合は、近くに巣がある可能性を考え、十分な距離を取りましょう。
六角形の巣穴がむき出しになった巣を作る
アシナガバチの巣は、六角形の巣穴が集まった、シャワーヘッドやハスの実のような形をしています。巣穴を覆う外皮がなく、幼虫を育てる育房が外から見えることが大きな特徴です。
巣の材料には、木の皮や枯れた植物などの繊維が使われます。蜂が繊維をかじり取って唾液と混ぜ、紙のような質感の巣を作ります。巣は基本的に一枚の層で構成され、種類によって下向き、横向き、反り返った形などに成長します。
一方、スズメバチの巣は成長すると外皮に覆われ、内部の巣盤が外から見えなくなります。初期の巣はとっくりのような形をしており、成長すると球形や楕円形になるのが一般的です。巣穴がむき出しになっていても、種類を確認するために巣の真下へ入ったり、棒で触れたりしないでください。
女王蜂・働き蜂・オス蜂では役割や毒針の有無が異なる
春になると、越冬を終えた女王蜂が単独で巣作りを始めます。巣を作りながら産卵し、幼虫の餌となる昆虫を捕らえて育てます。最初の働き蜂が羽化すると、巣作りや餌集め、幼虫の世話は働き蜂が担当し、女王蜂は産卵に専念するようになります。
夏の終わりから秋にかけては、新しい女王蜂とオス蜂が誕生します。交尾を終えた新女王蜂は朽ち木や建物の隙間などで越冬しますが、働き蜂やオス蜂、古い女王蜂は寒くなると死に、巣の活動は終了します。
毒針を持つのは、女王蜂と働き蜂であるメスです。毒針は産卵管が変化した器官であるため、オス蜂にはありません。ただし、外見だけでメスとオスを正確に見分けるのは難しく、オスだと思って近づくのは危険です。性別にかかわらず、蜂や巣から距離を取ることを優先してください。
日本に生息するアシナガバチの種類一覧

日本に生息するアシナガバチは、アシナガバチ属、チビアシナガバチ属、ホソアシナガバチ属の3つに大きく分けられます。それぞれ体長や模様、分布、巣を作る場所が異なります。まずは各種類の主な特徴を確認しましょう。
| 種類 | おおよその体長 | 主な特徴 | 主に見られる地域 |
|---|---|---|---|
| セグロアシナガバチ | 20~26mm | 背中の黒色部分が目立つ | 本州・四国・九州・沖縄など |
| キアシナガバチ | 20~26mm | 黄色い模様と脚が目立つ | 北海道・本州・四国・九州・沖縄 |
| フタモンアシナガバチ | 14~18mm | 腹部に2つの黄色い紋がある | 北海道・本州・四国・九州・沖縄 |
| トガリフタモンアシナガバチ | 14~19mm | 黒っぽい頭部と細い黄色の模様 | 主に北海道 |
| コアシナガバチ | 11~17mm | 小型で赤褐色の模様がある | 北海道・本州・四国・九州 |
| キボシアシナガバチ | 14~18mm | 黄緑色の繭蓋が目立つ | 北海道・本州・四国・九州 |
| ヤマトアシナガバチ | 15~23mm | 細身で黄色や褐色の帯がある | 本州・四国・九州など |
| オキナワチビアシナガバチ | 9~11mm | 淡い黄色と茶褐色の小型種 | 主に沖縄県 |
| ナンヨウチビアシナガバチ | 14~17mm | 濃い赤褐色と黄色い帯がある | 主に硫黄島 |
| ムモンホソアシナガバチ | 14~20mm | 淡い黄色と薄茶色の細長い体 | 本州・四国・九州など |
| ヒメホソアシナガバチ | 11~16mm | 頭部に黒い模様がある | 本州・四国・九州・奄美など |
この3属11種という数の出どころは、公的機関の文書です。森林総合研究所北海道支所が2006年3月に発行した研究レポートNo.87は、2ページで「日本では現在3属11種(アシナガバチ属7種、ホソアシナガバチ属2種、チビアシナガバチ属2種)のアシナガバチの仲間が知られています」と書いています(森林総合研究所北海道支所 研究レポートNo.87)。
属の分け方は、体の細さや腹部の付け根の作りによるものです。安全な距離から見分けるときも、まずこの3つの属のどれに当たるかを考えると、候補を絞りやすくなります。
アシナガバチ属に分類される7種類

アシナガバチ属には、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、トガリフタモンアシナガバチ、コアシナガバチ、キボシアシナガバチ、ヤマトアシナガバチが含まれます。
このうち、セグロアシナガバチやフタモンアシナガバチは、住宅地でも比較的見つかりやすい種類です。軒下、ベランダ、庭木、植え込み、物置、室外機の周辺など、人の生活圏に巣を作ることがあります。
種類によって攻撃性や巣の規模は異なりますが、おとなしいとされる種類でも、巣を刺激すれば防衛のために刺してくる可能性があります。外見から種類を判断できても、巣へ近づいて安全になるわけではありません。特に働き蜂が増える夏は、巣から十分な距離を取りましょう。
セグロアシナガバチ
セグロアシナガバチは、キアシナガバチと並ぶ大型のアシナガバチです。体長はおおむね20~26mmで、黒色を基調とした体に黄褐色や茶褐色の模様があります。名前のとおり、胸部の後ろ側にある前伸腹節が全体的に黒く見えることが大きな特徴です。
本州、四国、九州、沖縄などに分布し、家屋の軒下、ベランダ、建物の隙間、室外機の裏、石垣、庭木などに巣を作ります。巣を刺激すると複数の働き蜂が飛び立ち、追いかけてくることがあるため注意が必要です。
キアシナガバチと見分けるときは、体全体の黄色い部分の多さだけでなく、背中側の黒い部分を確認します。ただし、安全な距離から模様を確認できない場合は、無理に種類を特定する必要はありません。
キアシナガバチ
キアシナガバチは、体長がおおむね20~26mmに達する大型種です。黒色の体に鮮やかな黄色の斑紋が入り、脚や触角にも黄色い部分が目立ちます。セグロアシナガバチよりも全体的に黄色く見えやすいことが特徴です。
北海道から沖縄まで広く分布し、家屋の軒下、石垣、樹木の枝などに巣を作ります。平たく広がった釣り鐘型の巣を作り、中央部分の育房が長くなる傾向があります。
アシナガバチの中では警戒心や巣を守る行動が強く、巣に近づくと羽を震わせたり、周囲を飛び回ったりすることがあります。蜂が腹部を曲げる、羽音を立てる、こちらへ向かって飛ぶといった様子が見られたら、それ以上近づかず静かに離れてください。
フタモンアシナガバチ
フタモンアシナガバチは、体長14~18mmほどの中型種です。黒色を基調とした体を持ち、腹部の第2節に並ぶ2つの黄色い丸い紋が、名前の由来となっています。脚にも黄色い部分が多く見られます。
北海道から九州、沖縄まで広く分布し、家屋の軒下、塀の隙間、庭木、生け垣、枯れた植物の茎などに巣を作ります。巣穴が下を向く巣だけでなく、横向きに作られる巣もあります。
比較的おとなしいとされますが、住宅周辺に巣を作る機会が多いため、人と接触しやすい種類です。洗濯物の取り込みや庭の手入れ中に、巣や蜂を刺激してしまう場合があります。腹部の黄色い紋を確認するために近づかず、巣の位置と生活動線の近さから危険性を判断してください。
トガリフタモンアシナガバチ
トガリフタモンアシナガバチは、体長14~19mmほどで、フタモンアシナガバチによく似ています。体は全体的に黒く、細い黄色の模様が入ります。フタモンアシナガバチと比べて頭部が黒っぽく見える点が、見分ける手掛かりです。
主に北海道で確認されるため、見つけた地域も種類を絞り込む重要な情報になります。家屋の軒下、生け垣、庭木など、比較的明るく開けた場所に巣を作ることがあります。
巣は下向きまたは横向きのお椀型に近く、育房の数は比較的少ない傾向があります。ただし、巣の大きさは発見した時期によっても変わります。小さな巣であっても働き蜂が羽化している可能性があるため、手で取ったり枝ごと切ったりしないでください。
コアシナガバチ
コアシナガバチは、体長11~17mmほどの比較的小さなアシナガバチです。黒色の体に黄色と赤褐色の模様が入り、大型種よりも全体的に赤茶色に見えることがあります。腹部の第3節や第4節に見られる黄色い斑紋も特徴です。
北海道、本州、四国、九州に分布し、日当たりのよい岩場、平地、低山地、木の枝、葉の裏、家屋の軒など、さまざまな場所に巣を作ります。巣は片側へ伸びながら、外側が上向きに反り返るような形に成長します。
体が小さいからといって安全とは限りません。巣を刺激すれば追いかけて刺すことがあり、低い庭木や生け垣に営巣すると、剪定や草刈りの際に気づかず近づく可能性があります。庭仕事の前には、蜂の出入りがないか確認しましょう。
キボシアシナガバチ
キボシアシナガバチは、体長14~18mmほどの中型種です。黒色や茶褐色を基調とした体を持ち、腹部には褐色の横帯が見られます。コアシナガバチと似ていますが、巣の繭蓋が黄緑色や黄色に見えることが特徴です。
北海道から九州、屋久島などに分布し、木の枝や葉の裏といった比較的低い場所に巣を作ります。巣は一方向へ伸びながら反り返ることがあり、大型種の巣ほど大きくならない傾向があります。
黄色く盛り上がって見える部分は、幼虫がさなぎになるときに巣穴を閉じた繭蓋です。ただし、光の当たり方や巣までの距離によって色は変わって見えます。繭蓋の色を確認しようとして、巣の裏側や真下へ回り込まないようにしてください。
ヤマトアシナガバチ
ヤマトアシナガバチは、体長15~23mmほどで、黄色や黄褐色の模様を持つ種類です。キアシナガバチやセグロアシナガバチに似ていますが、比較的細身で、胸部の黄色い筋や腹部の帯模様が見分ける手掛かりになります。
本州、四国、九州、対馬、屋久島、奄美大島などに分布し、低山地や里山の小枝、葉の裏、家屋の軒下などに巣を作ります。巣の規模は比較的小さく、黄色い繭蓋が目立つ場合があります。
性質は比較的おとなしいとされますが、強い振動を与えたり巣へ接近したりすれば、刺される可能性があります。生息数が多くない地域もあるため、むやみに駆除するのではなく、人が通らない場所にある小さな巣なら、安全を確保したうえで専門家へ対応を相談する方法もあります。
チビアシナガバチ属に分類される2種類

日本で見られるチビアシナガバチ属には、オキナワチビアシナガバチとナンヨウチビアシナガバチがあります。一般的なアシナガバチ属とは異なり、腹部の付け根に短い柄のようなくびれがあり、種類によってはトックリバチの仲間に似て見えます。
主な分布は沖縄県や硫黄島などに限られるため、本州の住宅地で見つけた蜂がチビアシナガバチ属である可能性は高くありません。体の模様だけでなく、見つけた地域を必ず照合しましょう。
どちらも比較的小型ですが、巣へ近づけば防衛行動を取ります。サトウキビやチガヤ、ソテツなどの葉に巣を作ることがあり、農作業や草刈りの際に巣を刺激する可能性があります。植物の葉裏へ手を入れる前に、蜂が出入りしていないか確認してください。
オキナワチビアシナガバチ
オキナワチビアシナガバチは、体長9~11mmほどの小型種です。淡い黄色や褐色を基調とした体を持ち、腹部の付け根付近に一対の大きな黄色い紋が見られます。
主に沖縄県の海岸部などで見られ、チガヤ、ススキ、サトウキビ、ソテツ、アダンなどの葉に縦長の巣を作ります。葉の裏側に巣が隠れるため、正面からは見つけにくいことがあります。
攻撃性や毒性が特に強い種類ではありませんが、巣を守るメスは毒針を持っています。草刈りや収穫作業で葉を揺らすと、巣にいた蜂が飛び出す可能性があります。蜂が繰り返し同じ植物へ出入りしている場合は、葉をめくって確認せず、作業を中断して距離を取りましょう。
ナンヨウチビアシナガバチ
ナンヨウチビアシナガバチは、体長14~17mmほどで、濃い赤褐色の体と腹部の幅広い黄色い帯が特徴です。腹部第1節の付け根が細く柄のように見えるため、ほかのアシナガバチと見分ける手掛かりになります。
本来は東南アジアやマリアナ諸島などに分布し、日本では硫黄島に定着しています。営巣規模が大きく、育房数が1,000を超える場合があります。昆虫を捕食する社会性の蜂であり、分布が拡大した場合には在来昆虫への影響が懸念されています。
ナンヨウチビアシナガバチは、生態系への被害を及ぼすおそれのある外来種として扱われています。ただし、一般の住宅地で見つける可能性は限られます。硫黄島など分布地域で疑わしい蜂を見つけても、生きたまま捕獲したり別の場所へ運んだりせず、関係機関へ相談してください。
ホソアシナガバチ属に分類される2種類

ホソアシナガバチ属には、ムモンホソアシナガバチとヒメホソアシナガバチがあります。どちらも一般的なアシナガバチ属より体が細く、胸部と腹部の間が強くくびれて見えることが特徴です。
低山地や里山、林の縁など、植物が多い環境で見られます。小枝、草の茎、葉の裏といった比較的低い場所に、細長い巣を作ります。住宅地の軒下で見かける代表的なアシナガバチとは、営巣環境にも違いがあります。
両種は外見がよく似ており、体の大きさだけで見分けることは困難です。頭部の模様や体の黒色部分の濃さが判断材料になりますが、動いている蜂を肉眼で判別するのは簡単ではありません。撮影する場合も、望遠機能を使い、安全な距離を保ってください。
ムモンホソアシナガバチ
ムモンホソアシナガバチは、体長14~20mmほどです。体は細長く、淡い黄色と薄茶色の縞模様が見られます。名前にある「ムモン」は、頭部の顔面側に目立つ黒い模様がないことに由来します。
本州、四国、九州、対馬、屋久島などに分布し、低山地や里山の小枝、葉の裏、草の茎などに巣を作ります。働き蜂が増えると、巣に100匹前後が集まる場合があります。
一般的なアシナガバチは女王蜂が単独で越冬することが多い一方、ムモンホソアシナガバチは樹洞などに複数の新女王蜂が集まり、集団で越冬することがあります。冬に蜂が集まっている場所を見つけても、眠っていると考えて触れたり、掃除機で吸ったりしないようにしてください。
ヒメホソアシナガバチ
ヒメホソアシナガバチは、体長11~16mmほどで、ムモンホソアシナガバチよりやや小型です。淡い色の体に黒色や褐色の模様があり、頭部に黒い模様が見られる点が見分ける手掛かりになります。
本州、四国、九州、対馬、屋久島、トカラ列島、奄美大島などに分布します。低山地や里山にある木の小枝や葉の裏へ、下方向に細長く伸びる巣を作ります。
ムモンホソアシナガバチと外見が似ていますが、頭部だけでなく体全体の黒い模様が濃く見える傾向があります。ただし、光の当たり方や個体差によって色の見え方は変わります。種類を確認するために巣へ接近するよりも、人が通る場所に巣があるかどうかを優先して確認しましょう。
北海道で見られる種類と沖縄や硫黄島だけで見られる種類がある
日本に分布する11種を、地域の側から並べ直します。
| 地域 | 分布が確かめられている種類 | 資料での分布の書き方 |
|---|---|---|
| 北海道で見られる | キアシナガバチ/コアシナガバチ/キボシアシナガバチ/トガリフタモンアシナガバチ/フタモンアシナガバチ | 北海道(渡島半島以南)、北海道・本州・四国・九州、北海道(札幌,奥尻島)、北海道(渡島半島を除く)・本州(秋田県)のように、分布に北海道が入っている |
| 本州・四国・九州が中心 | セグロアシナガバチ/ヤマトアシナガバチ/ムモンホソアシナガバチ/ヒメホソアシナガバチ | 本州・佐渡・四国・九州・対馬・屋久島・沖縄のように、分布に北海道が入っていない |
| 南西諸島・硫黄島だけ | オキナワチビアシナガバチ/ナンヨウチビアシナガバチ | 奄美大島以南の琉球列島、火山列島硫黄島 |
分布は、森林総合研究所が公開している森林生物情報の種ごとの分布欄(2020年3月更新)で確かめました。ナンヨウチビアシナガバチは環境省の生態系被害防止外来種リスト(第2版・令和8年9月11日)、ヒメホソアシナガバチは農林水産省のデータベースに収められた2020年の論文の分布表で確かめています。
地域で絞り込むときは、2つのことに気をつけてください。1つは、分布の記録がないことと、その地域にいないことは同じではない点です。分布は調査が進むと書き換わり、これまで記録のなかった地域で巣が見つかることもあります。
もう1つは、同じ種類でも地域によって色の出方が変わる点です。フタモンアシナガバチは沖縄の個体で黄色い斑紋が発達すると記録されており、ヤマトアシナガバチも宮古・八重山諸島の個体はほぼ全身が黄色に見えると記録されています。本州で見た写真と色が合わないからといって、別の種類だと決めないでください。
巣を刺激すると追いかけて刺してくる種類がある
巣に近づいたときにどう動くかは、種類ごとに資料で書き分けられています。あきた森づくり活動サポートセンターは、アシナガバチの仲間について種類ごとの攻撃性を1行で記述しています。次の表は、その記述が確認できた種類だけを並べたものです。
| 種類 | 資料に書かれている攻撃性 |
|---|---|
| キアシナガバチ | 巣を刺激すると数mの距離まで追い掛けて刺しに来る |
| セグロアシナガバチ | 巣を刺激すると数mの距離まで追い掛けて刺しに来る |
| フタモンアシナガバチ | 巣を刺激すると数mの距離まで追い掛けて刺しに来る |
| コアシナガバチ | 巣を刺激すると追い掛けて刺しに来る |
| ヤマトアシナガバチ | 巣を刺激してもあまり攻撃性はない |
この記述は、巣を刺激したときの行動について書かれたものです。表に出ていない種類が、おとなしいという意味ではありません。
追いかけてくる種類かどうかで、巣に近づける距離が変わるわけではありません。巣を見つけたら、種類にかかわらずその場を離れ、洗濯物の取り込みや庭の手入れの動線から外れているかを先に確かめてください。刺されてしまったときにその場ですることは、刺されたときの手当てを詳しく見るにまとめています。
アシナガバチの種類を見分けるポイント

アシナガバチの種類を見分けるときは、体の大きさや色だけでなく、胸部・腹部の模様、頭部や脚の色、分布、巣の特徴を確認します。ただし、種類の特定よりも安全確保が優先です。肉眼で確認できない場合は、蜂や巣へ近づかないでください。
見る順番は、安全な距離から見えるものから足していきます。はじめに体の大きさ、次に背中(前伸腹節)の色、そのあとに腹部の模様です。ただし、雨の日や逆光では背中の色が分かりません。森林総合研究所の森林生物情報も、キアシナガバチとセグロアシナガバチを前伸腹節の色で区別する方法について、沖縄ではこの手掛かりが使えないとしています。色が分からないときは、種類を決めずに距離を取ってください。蜂の姿を見ておらず巣だけを見つけたときは、アシナガバチの巣の見分け方で巣の形から絞り込めます。
安全な距離から見えた外見の特徴で、アシナガバチの種類を絞り込む目安です。公的な資料で決め手として書かれているものだけを並べます。
| 見えた特徴 | 当てはまる種類 | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 背中(前伸腹節)に黄色い縦の筋が1対ある | キアシナガバチ | 沖縄ではこの手掛かりが使えない |
| 背中(前伸腹節)が全体に黒い | セグロアシナガバチ | 沖縄ではこの手掛かりが使えない |
| 腹部第2節に丸い黄色の斑紋が二つある | フタモンアシナガバチ | 前胸背板は黒い |
| 全体が赤褐色で、腹部第3・4節に黄色の斑紋がある | コアシナガバチ | キボシアシナガバチに似る |
| 腹部第1節が細く、付け根が柄のように見える | ナンヨウチビアシナガバチ | 分布は硫黄島に限られる |
決め手は、あきた森づくり活動サポートセンターの記述、森林総合研究所の森林生物情報、国立環境研究所の侵入生物データベースから取りました。どの行にも当てはまらないときは、アシナガバチ以外の蜂かもしれません。アシナガバチ以外の蜂の見分け方で、蜂の仲間全体から絞り込めます。
蜂の種類が分からないままでも、駆除の相談はできます。猿太郎にも、種類は分からないが来てほしいというご依頼が寄せられています。
体の大きさから種類を絞り込む
アシナガバチの体長は、種類によって1cm前後から2.5cmを超えるものまで差があります。セグロアシナガバチとキアシナガバチは20~26mmほどの大型種で、見た目にも存在感があります。フタモンアシナガバチ、キボシアシナガバチ、ヤマトアシナガバチは中型で、コアシナガバチやオキナワチビアシナガバチは比較的小型です。
ただし、女王蜂、働き蜂、オス蜂では体の大きさが異なります。同じ種類でも女王蜂は働き蜂より大きい傾向があるため、目測した体長だけで種類を断定することはできません。
写真から判断するときも注意が必要です。蜂とカメラの距離、撮影角度、背景に写った物の大きさによって、実際より大きく見えたり小さく見えたりします。体長は候補を絞り込む最初の材料と考え、模様や分布などと併せて確認しましょう。
女王蜂・働き蜂・オス蜂に分けて体長が書かれている5種を並べます。
| 種類 | 女王蜂 | 働き蜂 | オス蜂 |
|---|---|---|---|
| キアシナガバチ | 24mm内外 | 18~23mm | 19~23mm |
| セグロアシナガバチ | 24mm内外 | 16~22mm | 17~23mm |
| ヤマトアシナガバチ | 18mm内外 | 15~17mm | 17mm内外 |
| フタモンアシナガバチ | 18mm内外 | 14~16mm | 15~16mm |
| コアシナガバチ | 16mm内外 | 11~13mm | 12~14mm |
体長の数値は、あきた森づくり活動サポートセンターが公開している昆虫シリーズの記述から写しました。
体の色と胸部・腹部の模様を確認する

アシナガバチの多くは、黒色や褐色を基調とした体に、黄色や黄褐色の模様があります。特に、胸部の背中側と腹部の模様は、種類を見分ける重要なポイントです。
セグロアシナガバチは、胸部の後ろ側にある前伸腹節が黒く見えます。キアシナガバチは同じ部分に黄色い縦筋が入り、体全体にも黄色い斑紋が多く見られます。フタモンアシナガバチは、腹部に並ぶ2つの黄色い円形の紋が特徴です。コアシナガバチは、黄色だけでなく赤褐色の模様が混ざります。
蜂の体は光を反射しやすく、日なたと日陰では色が違って見えることがあります。また、模様には個体差もあります。黄色が多い、背中が黒いという印象だけで断定せず、模様の位置や形まで確認してください。
頭部・脚・触角の色を確認する
胸部や腹部の模様だけでは見分けにくい場合は、頭部、脚、触角の色も確認します。キアシナガバチは名前のとおり脚の黄色が目立ち、触角の先まで黄色く見える傾向があります。セグロアシナガバチは、キアシナガバチよりも黒色や褐色の部分が多く見えます。
フタモンアシナガバチも脚が黄色いため、脚だけではキアシナガバチと判断できません。体の大きさや腹部にある2つの黄色い紋を併せて確認する必要があります。
ホソアシナガバチ属では、頭部の黒い模様が見分ける手掛かりです。ムモンホソアシナガバチは頭部の目立つ模様が少なく、ヒメホソアシナガバチには黒い模様が見られます。これらの違いは遠くから確認しにくいため、写真を撮る場合はズーム機能を使い、蜂へ近づかないようにしましょう。
生息地域と活動時期を照合する
種類によって分布する地域が異なるため、蜂を見つけた場所は有力な判断材料になります。トガリフタモンアシナガバチは主に北海道、オキナワチビアシナガバチは主に沖縄県、ナンヨウチビアシナガバチは主に硫黄島で見られます。
セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、コアシナガバチなどは広い地域に分布していますが、同じ地域でも市街地、山間部、海岸部など、好む環境に違いがあります。
多くのアシナガバチは春から秋に活動します。春は越冬した女王蜂が単独で巣作りを始め、夏になると働き蜂が増えます。秋に新女王蜂とオス蜂が生まれ、寒くなると巣の活動は終了します。冬に単独または集団でいる蜂は、越冬中の新女王蜂である可能性があります。
巣を作った場所から種類を絞り込む
アシナガバチは種類ごとに巣を作りやすい場所が異なります。セグロアシナガバチやフタモンアシナガバチは、家屋の軒下、ベランダ、物置、塀の隙間、庭木など、住宅周辺にも巣を作ります。
コアシナガバチやキボシアシナガバチは、庭木の枝や葉の裏など、比較的低い場所で見つかることがあります。ムモンホソアシナガバチやヒメホソアシナガバチは、低山地や里山にある小枝、草の茎、葉の裏などを利用します。
巣が見えなくても、複数の蜂が同じ隙間や植え込みへ出入りしている場合は、内部に巣がある可能性があります。巣を探すために庭木を揺らす、室外機の裏へ手を入れる、換気口をのぞき込むといった行動は危険です。巣の位置が分からない場合は、蜂の出入りがある場所から距離を取りましょう。
巣の形・向き・繭蓋の色を確認する
アシナガバチの巣は、六角形の育房がむき出しになっていますが、全体の形や向きには種類ごとの傾向があります。キアシナガバチやセグロアシナガバチは、下向きの釣り鐘型やハスの花を逆さまにしたような巣を作ります。
フタモンアシナガバチの巣には、下向きと横向きがあります。コアシナガバチの巣は、一方向へ伸びながら上へ反り返るように成長します。キボシアシナガバチは、巣穴を覆う黄緑色の繭蓋が見分ける手掛かりです。
ただし、巣の形は種類だけでなく、作り始めてからの期間や設置場所の広さにも左右されます。成長途中の巣では、特徴的な形になっていないこともあります。巣の裏側や上側を確認しようとして回り込まず、見える範囲で判断してください。
アシナガバチを駆除する方法

アシナガバチの巣を自分で駆除できるのは、蜂の種類と巣の位置を安全に確認でき、巣が小さく、十分な防護と退避経路を確保できる場合に限られます。少しでも不安がある場合は、無理に作業せず蜂駆除業者へ相談してください。
スズメバチの種類は6つ|写真と巣の形で見分けて危険度がわかる
住宅のまわりで見るスズメバチは6種類です。大きさは働きバチで17ミリから40ミリまで開きがあり、巣の ... [続きを読む]
自分で駆除できる巣か確認する
駆除を始める前に、自分で安全に作業できる状態か確認します。巣が小さく見えても、すでに複数の働き蜂が羽化している場合があります。また、アシナガバチだと思っていた蜂がスズメバチである可能性もあります。
自力駆除を検討できるのは、アシナガバチの巣であることが明確で、手が届く低い場所にある小さな初期巣に限ります。脚立が必要な高所、屋根裏、床下、室外機や給湯器の内部、狭い隙間にある巣は、自分で対処しないでください。
蜂毒アレルギーがある人、以前蜂に刺されて強い症状が出た人、必要な防護服を用意できない人も自力駆除を避けましょう。周囲に子どもやペット、通行人がいる場合も危険です。作業前に、蜂が飛び出した際にすぐ屋内へ避難できるか確認してください。
蜂の活動が鈍る日没後に作業する
アシナガバチは日中に餌や巣材を探して飛び回り、暗くなると多くの働き蜂が巣へ戻ります。そのため、自分で駆除できる条件がそろっている場合でも、日中ではなく日没後に作業します。
作業前には蜂用殺虫剤、防護服、手袋、長靴、顔を覆う防護ネット、巣を回収する袋などを準備します。白や淡い色の服装を選び、首元、袖口、裾などから蜂が入らないようにします。一般的な衣服を重ねただけでは、蜂の針を完全に防げません。
実際の作業は、次の順番で準備してください。
- 家族や近隣の人へ作業することを知らせます。
- 窓やドアを閉め、子どもやペットを屋内へ移動させます。
- 巣までの経路と屋内へ逃げる経路を確認します。
- 防護具を着用し、蜂用殺虫剤の使用方法を確認します。
- 風向きを確認し、風下から薬剤を噴射しないようにします。
雨天、強風時、視界が悪い場所では作業を中止してください。
離れた場所から蜂用殺虫剤を噴射する
殺虫剤は、必ず蜂への使用が認められた製品を選び、容器に記載された使用距離、噴射時間、注意事項を守ります。一般的な家庭用殺虫剤では、噴射距離が足りなかったり、蜂へ十分な効果を得られなかったりする可能性があります。
巣へ近づいてから噴射するのではなく、製品が指定する距離を確保した状態で、巣の表面へ薬剤を届かせます。噴射直後は蜂が巣から飛び出すことがあるため、正面や真下に立たず、すぐ退避できる位置から作業します。
手順は次のとおりです。
- 巣から十分な距離を取り、退避方向を再確認します。
- 風上または横風の位置から、巣の表面へ薬剤を噴射します。
- 蜂が自分の方向へ飛んできた場合は、無理に作業を続けず屋内へ避難します。
- 薬剤がなくなった場合や巣へ届かない場合は、近づいて続行しません。
複数の蜂が飛び回っている巣や、薬剤が届かない場所にある巣は、専門業者へ依頼してください。
蜂がいなくなったことを確認して巣を撤去する
殺虫剤を噴射した直後に巣へ近づくのは危険です。巣の内部や周辺に生きた蜂が残っている可能性があるため、離れた場所から蜂の動きがないか確認します。
巣を撤去するときは、素手で触らず、長い棒や剪定ばさみなどを使います。巣の真下へ顔や体を入れないようにし、落とした巣は丈夫な袋へ入れて密閉します。自治体によって処分方法が異なるため、地域のごみ分別ルールも確認してください。
撤去の流れは次のとおりです。
- 巣と周囲に動いている蜂がいないか離れた場所から確認します。
- 防護具を着用したまま、巣の下に回収用の袋を準備します。
- 長い道具で巣を取り外し、袋へ入れます。
- 袋をしっかり密閉し、指定された方法で処分します。
- 巣を撤去した後も周辺の蜂の動きを確認します。
生死を確認するために蜂へ触れることは避けてください。
巣があった場所に戻り蜂と再営巣の対策をする
巣を撤去した後も、餌集めなどで外出していた働き蜂が戻ってくることがあります。これを戻り蜂と呼びます。戻り蜂は巣がなくなった場所を飛び回り、周囲を警戒することがあるため、撤去直後にその場所へ近づかないでください。
巣があった場所には、製品の使用方法に従って、巣作り予防効果のある蜂用スプレーを使用します。ただし、電気設備、室外機、給湯器、換気口などへ薬剤をかけると、故障や火災につながるおそれがあります。設備周辺では、自分で薬剤を使用せず専門業者へ相談しましょう。
再発を防ぐには、春先から軒下、ベランダ、物置、庭木などを定期的に確認することが大切です。以前巣を作られた場所は、雨風を避けやすく蜂にとって条件がよいため、翌年も近くに新しい巣を作られる可能性があります。古い巣をそのまま再利用するわけではありませんが、同じ周辺が選ばれることはあります。
危険な場所や大きな巣は蜂駆除業者へ依頼する
働き蜂が増えた大きな巣や、高所・狭所にある巣は、自分で駆除しないでください。巣が大きくなるほど蜂の数が増え、殺虫剤を噴射した際に複数の蜂から攻撃される危険性が高まります。
屋根の軒先、2階以上のベランダ、天井裏、床下、壁の内部、室外機や給湯器の中などは、転落や設備の故障を伴うおそれもあります。脚立へ乗った状態で蜂に襲われると、慌てて転落する危険があります。
次のような場合は、作業を始めず蜂駆除業者へ依頼してください。
- アシナガバチかスズメバチか判断できない場合
- 巣が大きく、蜂が何匹も出入りしている場合
- 脚立や屋根への移動が必要な場合
- 屋根裏、壁の内部、機器の中に巣がある場合
- 防護服や安全な退避経路を確保できない場合
- 蜂毒アレルギーがある場合
- 子どもやペット、近隣住民への危険がある場合
自治体によっては相談窓口や駆除業者の案内制度があるため、地域の対応も確認しましょう。
アシナガバチに刺されたときの対処法

アシナガバチに刺されたら、まず巣から離れて安全を確保します。その後、傷口を洗って冷やし、全身の症状がないか確認してください。呼吸困難や意識障害などが現れた場合は、応急処置だけで様子を見ず、直ちに救急要請が必要です。
蜂に刺されたらどうする?その場でする手当てと病院に行く目安
蜂に刺されたら、姿勢を低くしてその場から離れ、流水で洗いながら毒を絞り出して冷やします。すぐ救急車を ... [続きを読む]
蜂を刺激せず速やかにその場から離れる
アシナガバチに刺された場所が巣の近くであれば、ほかの働き蜂から続けて攻撃される可能性があります。刺された直後は傷口を確認するよりも、まず巣や蜂から離れて安全な場所へ移動してください。
手で蜂を激しく払う、大声を出す、走りながら腕を振り回すといった行動は、周囲の蜂を刺激する可能性があります。姿勢をやや低くし、頭や顔を守りながら静かに離れます。近くに建物や車がある場合は、蜂が入らないよう注意しながら屋内へ避難してください。
安全な場所へ移動した後は、刺された時刻や刺された箇所、刺された回数を確認します。複数箇所を刺された場合、顔や首を刺された場合、子どもや高齢者が刺された場合は、症状が軽く見えても早めに医療機関へ相談してください。
刺された部分を流水で洗って冷やす
安全な場所へ移動したら、刺された部分をきれいな流水で洗います。蜂の毒や傷口の汚れを洗い流し、清潔な状態にしてください。傷口を爪で強く押したり、口で毒を吸い出したりしてはいけません。口内に傷がある場合、毒が体内へ入るおそれがあります。
アシナガバチの毒針はミツバチの針と異なり、通常は皮膚へ残りません。ただし、針のような異物が見える場合は、無理に指でつままず、医療機関へ相談するか、周囲を圧迫しない方法で慎重に取り除きます。
洗浄後は、保冷剤や氷を布で包み、刺された部分を冷やします。氷を皮膚へ直接当て続けると低温やけどを起こす可能性があるため、必ず布越しに使用してください。市販薬を使う場合は、薬剤師や医師へ相談し、用法・用量を守りましょう。
全身症状が現れたら速やかに医療機関を受診する
蜂に刺されると、刺された部分の痛み、赤み、腫れ、かゆみなどが現れることがあります。症状が刺された周辺だけにとどまっていても、腫れが強い場合や長引く場合は医療機関へ相談してください。
特に注意が必要なのは、刺された部分以外にも症状が広がる場合です。全身のじんましん、顔や唇の腫れ、繰り返す咳、吐き気、腹痛、めまい、強いだるさなどは、全身性のアレルギー反応である可能性があります。
症状が軽いからといって、自分で車を運転して病院へ向かうのは避けましょう。急激に症状が悪化する可能性があるため、家族や周囲の人に付き添ってもらうか、医療機関や救急相談窓口の指示を受けてください。蜂に刺された時刻、回数、蜂の種類が分かれば、受診時に伝えます。
呼吸困難や意識障害がある場合は救急要請する
息苦しさ、喉が締め付けられる感覚、声が出しにくい、全身に広がるじんましん、意識がもうろうとする、力が入らない、血圧が下がったように感じるなどの症状がある場合は、アナフィラキシーの可能性があります。直ちに119番へ通報してください。
救急車を待つ間は、急に立ち上がったり歩いたりせず、安静を保ちます。原則として仰向けに寝かせ、嘔吐がある場合や意識が低下している場合は、吐いた物を喉に詰まらせないよう横向きの姿勢を取らせます。呼吸や反応がなくなった場合は、通報先の指示に従って心肺蘇生を始めます。
医師からアドレナリン自己注射薬を処方されている本人が使用しようとしている場合は、取り出すなどの補助を行います。使用後も症状が治まったと判断せず、必ず救急搬送を受けてください。使用した時刻を記録し、使用済みの注射器を医療機関へ持参します。
アシナガバチの種類に関するよくある質問

アシナガバチの種類について調べていると、日本以外に生息する種類や種類ごとの危険性、巣の規模、食べ物などにも疑問が生じます。ここでは、種類一覧や見分け方の説明と重複しない疑問へ回答します。
世界には何種類のアシナガバチがいますか?
世界には数百種類のアシナガバチが知られており、分類によっては約800種類とされることがあります。熱帯から温帯まで広く分布し、地域によって生息する属や種類が異なります。
日本には、アシナガバチ属、チビアシナガバチ属、ホソアシナガバチ属に分けられる11種類が生息しています。ただし、昆虫の分類は研究の進展によって変更される場合があり、亜種を独立した種類として扱うかどうかによっても数え方が変わることがあります。
一般ユーザーが自宅周辺で種類を判断する場合、世界中の種類を確認する必要はありません。まず蜂を見つけた都道府県や周辺環境を確認し、日本国内でその地域に分布する種類へ候補を絞ると判断しやすくなります。
種類によって攻撃性や毒性は異なりますか?
アシナガバチは種類によって、巣を守る行動や人への警戒の強さが異なります。セグロアシナガバチやキアシナガバチは、巣へ近づくと威嚇したり追いかけたりすることがあるため、特に注意が必要です。
ヤマトアシナガバチやキボシアシナガバチなどは比較的おとなしいとされますが、刺激しても刺さないという意味ではありません。巣への振動、急な接近、庭木の剪定、洗濯物への接触などを攻撃と判断し、防衛行動を取る可能性があります。
また、刺された際の重症度は蜂の種類だけでは決まりません。刺された回数や場所、注入された毒の量、体質、蜂毒に対するアレルギーの有無によって変わります。おとなしい種類だと思っても素手で捕まえたり、巣を触ったりしないでください。
種類によって巣の規模や蜂の数は異なりますか?
アシナガバチの巣の規模は種類によって異なります。比較的小規模な巣で活動する種類がいる一方、フタモンアシナガバチやナンヨウチビアシナガバチのように、育房数が1,000を超える巣を作ることがある種類もいます。
ただし、育房の数と蜂の数は同じではありません。同じ育房を複数回利用して幼虫を育てる場合があるため、巣穴が300個あるからといって、同時に300匹の蜂がいるとは限りません。また、気候、餌の量、営巣場所、巣作りを開始した時期によっても規模は変わります。
春先の巣は女王蜂だけで管理されていることがありますが、夏になると働き蜂が増え、危険性が高まります。小さく見える巣でも蜂の出入りが多い場合は、自分で駆除せず専門業者へ相談しましょう。
日本に外来種のアシナガバチはいますか?
日本では、ナンヨウチビアシナガバチが国外から持ち込まれた外来種として確認されています。本来は東南アジアやマリアナ諸島などに分布し、日本では硫黄島に定着しています。
ナンヨウチビアシナガバチは昆虫などを捕食し、営巣規模が大きくなることがあります。そのため、本来生息していない地域へ分布が広がると、在来昆虫へ影響を与える可能性があります。生態系への被害を及ぼすおそれのある外来種のリストにも掲載されています。
外来種というだけで、一般の人がむやみに捕獲・駆除してよいわけではありません。分布地域で疑わしい蜂や巣を見つけた場合は、生きたまま別の場所へ運ばず、自治体や関係機関へ相談してください。なお、外来種のリストへの掲載と、法律で飼育や運搬などが規制される特定外来生物への指定は同じ意味ではありません。
アシナガバチは種類によって食べるものが異なりますか?
アシナガバチの成虫は、花の蜜や樹液などをエネルギー源として利用します。一方、幼虫には、働き蜂が捕まえたイモムシや毛虫などの昆虫をかみ砕き、肉団子状にして与えます。
捕食する昆虫の種類や大きさには多少の違いがありますが、多くのアシナガバチはチョウやガの幼虫などを利用します。そのため、庭木や農作物につく害虫を減らす益虫としての側面があります。
ただし、益虫だからという理由だけで、生活動線上の巣を放置するのは危険です。玄関、ベランダ、通路、子どもの遊び場、ペットが通る場所などに巣がある場合は、刺傷事故の危険性を優先して対応を判断しましょう。人がほとんど近づかない場所にある場合でも、巣の成長や蜂の出入りを安全な距離から確認してください。
小型のアシナガバチはどの種類ですか?
女王蜂・働き蜂・オス蜂に分けて体長が書かれている5種の中でもっとも小さいのは、働き蜂が11~13mmのコアシナガバチです。次が14~16mmのフタモンアシナガバチです。小型という言葉に決まった基準はないため、この5種の中での比較になります。働き蜂が18~23mmのキアシナガバチと16~22mmのセグロアシナガバチは、この5種の中では大きいほうに当たります。
ただし、同じ種類でも女王蜂、働き蜂、オス蜂で体長が違います。大きい種類でも、女王蜂ではなく働き蜂を見ていれば小さく見えます。小さく見えたことだけを手掛かりにせず、背中(前伸腹節)や腹部の模様と併せて確かめてください。
黒っぽく見えるアシナガバチはどの種類ですか?
黒っぽく見えるのはセグロアシナガバチとトガリフタモンアシナガバチですが、色だけでは決められません。蜂の体は光を反射しやすく、日陰や逆光では本来の色が分かりません。黒い蜂に見えても、アシナガバチではないことがあります。アブやクマバチ、クロアナバチとの違いは黒い蜂に見える別の虫の見分け方で確かめられます。
背中(前伸腹節)が全体に黒いのがセグロアシナガバチ、体が全体的に黒く細い黄色の模様が入るのがトガリフタモンアシナガバチです。ホソアシナガバチ属のヒメホソアシナガバチは、体そのものは淡い色で、黒い模様は頭部に見られます。見分けるときは、背中(前伸腹節)の色と、腹部第2節に丸い黄色の斑紋が二つあるかを確かめます。
まとめ

日本には、アシナガバチ属、チビアシナガバチ属、ホソアシナガバチ属に分類される11種類のアシナガバチが生息しています。住宅周辺では、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、フタモンアシナガバチ、コアシナガバチなどを見かけることがあります。
種類を見分ける際は、体の大きさだけでなく、胸部や腹部の模様、頭部・脚・触角の色、生息地域、活動時期、巣を作った場所、巣の形や繭蓋の色を確認します。ただし、種類を特定するために蜂や巣へ近づくのは危険です。
巣が大きい場合、蜂が何匹も出入りしている場合、高所や設備内部に巣がある場合、スズメバチとの区別がつかない場合は、自分で駆除しないでください。アシナガバチに刺され、呼吸困難、全身のじんましん、意識障害などが現れた場合は、直ちに119番へ通報しましょう。




