クロアナバチは刺す?手でつかまなければ刺さない蜂の見分け方と巣
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庭や公園の地面にポツポツと穴が開いていて、その周りを大きな黒い蜂が飛んでいる。そんな場面でこの記事にたどり着いた方が多いと思います。
先に結論を書きます。その蜂がクロアナバチなら、手でつかまなければ刺されません。巣は土の中にあります。公的機関の資料はいずれも地中と説明していて、家の壁や軒下に巣を作るという記載は確認できませんでした。
クロアナバチは、キリギリスの仲間を狩って幼虫の餌にする蜂です。毒は持っていますが、その毒は獲物を動けなくするためのもので、人を攻撃するために備わったものではありません。この記事では、公的機関が公開している資料の原文を引きながら、見た目・刺される心配・巣の場所・見つけたときにどうするかを順番に説明します。
黒い蜂には似たものがいくつもいます。名前がはっきりしない場合は黒い蜂の正体は?8種類の見分け方もあわせてご覧ください。
- ✓クロアナバチの見た目と大きさ
- ✓刺される心配がどれくらいあるか
- ✓巣がどこにできるか
- ✓庭や砂場で見つけたときにどうするか
目次
クロアナバチの見た目と大きさ

クロアナバチは、アナバチ科オオアナバチ属に分類される蜂です。学名はSphex argentatusといいます。この分類と学名は、公益財団法人東京都公園協会の生きもの図鑑に「【目】膜翅(ハチ)目【科】アナバチ科【属】オオアナバチ属【和名】クロアナバチ【学名】Sphex argentatus Fabricius」と記載されています(出典:公益財団法人 東京都公園協会「公園へ行こう!」)。
体長は3センチ近くある
千葉県立中央博物館は、生態園で撮影したクロアナバチについて「体長3センチ近い大型のハチです。」と説明しています(出典:千葉県立中央博物館「生態園の自然」2020年8月18日)。
3センチというのは、蜂としてはかなり大きい部類に入ります。庭で見かけたときに「大きい」と感じるのは、そのためです。大きさだけで危険な蜂だと判断してしまいがちですが、体の大きさと人への危険性は別の話になります。
体の色は黒で顔と胸に銀色の毛がある
上の写真を見ると、体は光沢のある黒で、翅は褐色を帯びた半透明です。胸のあたりに銀色に見える毛があり、腰は細くくびれています。漢字では「黒穴蜂」と書きます。
黒くて大きい蜂という点だけを見ると、他の蜂と区別がつきません。見分けるための手がかりは、体の模様にあります。写真のクロアナバチには、黄色や白の帯が見当たりません。帯のある蜂を見た場合は、別の種類を考えてください。蜂の種類全体については蜂の種類の見分け方にまとめています。
刺される心配はどれくらいあるか
サジェストでも「刺す」「刺される」「刺されたら」といった言葉が並びます。ここがいちばん知りたいところだと思いますので、公的機関の回答をそのまま引きます。
手でつかまなければ刺さない
大阪市立自然史博物館の質問コーナーで、昆虫研究室の松本学芸員は「攻撃性に関しては「普段は刺さない」どころか、手でぐっとつかまなければ、まず刺されることのない、非常に温和なハチです。」と回答しています(出典:大阪市立自然史博物館 質問コーナー 質問番号480・2001年8月7日)。
千葉県立中央博物館も、同じ趣旨のことを「手で掴まなければ刺されません。」と書いています(出典:千葉県立中央博物館「生態園の自然」2020年8月18日)。
2つの公的機関が、別々の資料で同じことを書いています。つかまなければ刺されない、というのがクロアナバチに対する見方です。
巣に近づくと襲ってくるという記載はない
スズメバチやアシナガバチが怖いのは、巣に近づいた相手を集団で攻撃してくるからです。クロアナバチについて、そうした巣の防衛が起きるという記載は、こちらが確認した公的機関の資料には見当たりませんでした。
先ほどの松本学芸員の回答は、この違いにも触れています。「巣を防御するために相手(特にほ乳類)にダメージを与えるような毒を手に入れたアシナガバチやスズメバチに比べると、」という書き出しで、クロアナバチの毒を説明しています(出典:大阪市立自然史博物館 質問コーナー 質問番号480・2001年8月7日)。
巣を守るための毒を持つ蜂と、そうでない蜂がいる、という区別です。クロアナバチは後者にあたります。
刺されると痛みはある
刺されないと書きましたが、絶対に刺されないという意味ではありません。同じ回答には「(ただし刺されると痛いことは痛いです)」と添えられています(出典:大阪市立自然史博物館 質問コーナー 質問番号480・2001年8月7日)。
症状については「刺された場合の症状は人によって様々で、一概にはいえませんが、」と書かれており、こうなるとは断定されていません(出典:同上)。
腫れや痛みが引かない場合や、気分が悪くなった場合は、医療機関を受診してください。刺されたあとの対応はハチに刺されたらにまとめています。
毒は獲物を麻酔するためのもの
クロアナバチが毒を使うのは、狩った獲物を動けなくするときです。松本学芸員は「クロアナバチの毒は、節足動物を麻痺させるためのもので、毒の危険性からいっても、それほど心配する必要は無いと思います。」と回答しています(出典:大阪市立自然史博物館 質問コーナー 質問番号480・2001年8月7日)。
千葉県立中央博物館も、狩りの様子を「キリギリスの仲間を狩り、麻酔をかけて地中に掘った孔に運び込み産卵します。」と説明しています(出典:千葉県立中央博物館「生態園の自然」2020年8月18日)。獲物はツユムシなどのキリギリスの仲間です。
つまり、この毒は人に効かせるために備わったものではありません。
似た黒い蜂と見分ける
黒い蜂を見て「クロアナバチかもしれない」と思ったとき、実際には別の蜂だったということがあります。ここでは、間違えやすい3種類を写真で並べます。
クロスズメバチとの見分け方

写真のクロスズメバチには、腹に白い帯がはっきり並んでいます。顔にも白い模様があります。クロアナバチにこの帯は見当たらないので、まずここで見分けられます。
大きさも違います。堺市は、クロスズメバチについて「体長は1センチメートルほどで、ミツバチぐらいの大きさです」と説明しています(出典:堺市 健康福祉局 保健所 生活衛生課 くらしの虫相談係)。クロアナバチは3センチ近くあるので、並べて見れば区別がつきます。
巣を作る場所については、同じ資料に「クロスズメバチは土中や屋根裏などに巣を作ります」とあります。性質については「性質はおとなしく巣に近づいても向って来ることはほとんどありません」と書かれています(出典:同上)。
オオハキリバチとの見分け方

写真のオオハキリバチは、胸に橙色がかった毛が密に生えています。腹は黒く、全体としてずんぐりした体つきです。クロアナバチの銀色がかった毛とは色が違い、腰も細くくびれていません。
巣を作る場所については、公的機関の資料を確認できませんでした。この記事では、写真で分かる見た目の違いだけを挙げます。
ドロバチとの見分け方

写真のドロバチには、鮮やかな黄色の帯が入っています。黒一色に見えるクロアナバチとは、色で区別できます。
こちらも巣を作る場所について公的機関の資料を確認できなかったため、見た目の違いだけを挙げます。帯の有無が、いちばん分かりやすい手がかりになります。
巣はどこにできるのか
クロアナバチの巣は、土の中にあります。ここが、家の被害を心配している方にとっていちばん大事なところです。
舗装されていない土の地面にできる
公益財団法人東京都公園協会は、クロアナバチについて「地中に深い巣穴を掘ります。8月頃にツユムシなどを狩る姿を目にします。」と記載しています(出典:公益財団法人 東京都公園協会「公園へ行こう!」)。
千葉県立中央博物館も「麻酔をかけて地中に掘った孔に運び込み産卵します。」と書いています(出典:千葉県立中央博物館「生態園の自然」2020年8月18日)。
「地中に深い巣穴を掘る」という説明から分かるとおり、巣ができるのはアスファルトで舗装されていない土の地面です。庭の花壇のふち、公園の砂場、駐車場わきの土などで見かけられることがあります。
掘った土が盛られた穴が目印になる
蜂の体格に合う大きさの穴が地面に開き、その周りに掘り出された土が盛られていれば、そこが巣の入口だと考えられます。近くに何個も穴が並んでいても、それぞれ別の個体の巣穴である可能性があります。
蜂が獲物をくわえて地面に降り、穴に運び込む様子が見られれば、その穴が巣だと分かります。巣の見分け方全般は蜂の巣の種類と見分け方にまとめています。
コンクリートの壁や屋根裏にできるという説明について
インターネット上には、クロアナバチがコンクリートの壁や屋根裏に巣を作ると説明しているページがあります。
こちらで確認した範囲では、公的機関が公開している資料はいずれも「地中」としか書いていません。大阪市立自然史博物館、千葉県立中央博物館、東京都公園協会の3つを当たりましたが、壁や屋根裏に営巣するという記述は見つけられませんでした。
壁や軒下、屋根裏に巣がある場合は、別の蜂である可能性を先に考えてください。建物に巣を作る蜂は他にいます。
家のまわりで見つけたときにどうするか
ここからは、実際に穴や蜂を見つけたときにどう動くかの話になります。場所によって対応が変わるので、3つに分けて説明します。
そのままにしておいてよい場合
穴が花壇の奥や庭のすみにあり、人が通らない場所であれば、手をかけずにそのままで問題ありません。クロアナバチは1年のうち活動する時期が限られており、東京都公園協会の記載では「8月頃」に姿が見られるとされています(出典:公益財団法人 東京都公園協会「公園へ行こう!」)。
巣を掘り返したり、穴を埋めたりする必要はありません。
子どもが遊ぶ砂場に穴があるとき
砂場に穴が開いていて、小さな子どもが遊ぶ場所だという相談は、以前から寄せられています。大阪市立自然史博物館の質問コーナーには、栃木県矢板市で公園を管理している方から「砂場にも穴を掘っており、小さい子供等が利用するため少々不安です。」という質問が寄せられていました(質問番号480・2001年8月7日)。
これに対する松本学芸員の回答は「手でつかまないなどの指導は必要でしょうが、巣作りから、狩り、獲物の運び入れ、巣の埋め立てといろいろな行動が身近に観察できて、夏休みの自由研究の課題としても非常に面白いものだと思っています。」というものでした(出典:大阪市立自然史博物館 質問コーナー 質問番号480・2001年8月7日)。
つかまないように伝えることが、対応の中心になります。
殺虫スプレーをかける前に確かめること
穴を見つけてすぐに殺虫スプレーをかけると、蜂を刺激することになります。クロアナバチであれば、そもそもかける必要がありません。
かける前に、飛んでいる蜂に黄色や白の帯がないかを確かめてください。帯があれば別の蜂です。距離を取ったまま、写真を撮って見比べる方法が使えます。
駆除を考えたほうがよいのはどんなときか
自分でできる駆除方法やスプレーを探してこの記事にたどり着いた方もいると思いますが、相手がクロアナバチであれば、原則として駆除は要りません。手をかけたほうがよいのは、次の2つのどちらかに当てはまるときです。
別の蜂の巣と取り違えていないか
地面に穴を掘って巣を作る蜂は、クロアナバチだけではありません。堺市の資料にあるとおり、クロスズメバチも「土中や屋根裏など」に巣を作ります(出典:堺市 健康福祉局 保健所 生活衛生課 くらしの虫相談係)。
穴が1つずつ離れているか、それとも1か所に多数の蜂が出入りしているかを、離れた場所から見てください。多数が同じ穴に出入りしている場合は、クロアナバチではない可能性を考えてください。種類が分からないうちは、穴に近づかないでください。
自分では見分けがつかないとき
写真を撮っても判断がつかない場合や、人がよく通る場所で蜂が出入りしている場合は、無理に近づかずにご相談ください。種類が分からないまま作業をすると、危険な蜂だったときに刺される可能性があります。
料金の目安は蜂の巣駆除の料金にまとめています。
クロアナバチについてよくある質問
益虫ですか
クロアナバチは、キリギリスの仲間を狩って幼虫の餌にします。この習性から益虫として紹介されることがありますが、益虫かどうかを公的機関が判断している資料は、こちらでは確認できませんでした。
分かっているのは、狩る相手がキリギリスの仲間であることです。千葉県立中央博物館は「キリギリスの仲間を狩り」と、東京都公園協会は「ツユムシなどを狩る」と記載しています(出典:千葉県立中央博物館「生態園の自然」2020年8月18日/公益財団法人 東京都公園協会「公園へ行こう!」)。
大量に発生することはありますか
1か所に複数の巣穴が並ぶ例もあります。ただし、どのくらいの数まで増えるのかについて、公的機関の資料は確認できませんでした。数を示した記録が見つからないため、この記事では書きません。
大阪市立自然史博物館に寄せられた質問では、公園の管理者が「小さい公園なのですが20~30匹ぐらいはいるようです。」と書いていました(質問番号480・2001年8月7日)。これは1つの公園での観察であって、一般的な数ではありません。
家の中に入ってきますか
公的機関の資料はいずれも地中に巣穴を掘ると説明しているため、家屋の中に巣が作られることは基本的にないと考えられます。窓や玄関から迷い込むことはあり得ますが、その場合は室内にとどまる理由がないので、窓を開けて出ていくのを待つ形になります。
家の中に蜂が入ったときの対応は家の中に蜂が入ったときの追い出し方にまとめています。
まとめ|土の穴を見つけてもあわてなくてよい
この記事の内容をまとめます。
- クロアナバチは体長3センチ近い黒い蜂で、黄色や白の帯は見当たりません
- 公的機関の資料では、手でつかまなければ刺されないとされています
- 毒は獲物を麻酔するためのもので、人を攻撃するためのものではありません
- 公的機関の資料はいずれも地中と説明していて、壁や屋根裏に営巣するという記載は確認できませんでした
- 大阪市立自然史博物館の回答にあるとおり、手でつかまないことを伝えるのが基本になります
地面に穴が開いていると、それだけで不安になると思います。ただ、その穴がクロアナバチのものであれば、埋めたり薬をまいたりせずに済みます。
帯のある蜂が出入りしている、人がよく通る場所にある、写真を見ても判断がつかない。そうした場合は、無理をせずご相談ください。




