鍵がささらない・回らないときは鉛筆で直る?その理由やNG行動を解説!

この記事でわかること
- 鍵がささらない・回らないトラブルは鉛筆で直せるのか
- 鍵トラブルを鉛筆で直す方法
- 鍵がささらない・回らないときにやってはいけないこと
- 鉛筆で改善しない症状
- 鉛筆で改善しなかった場合の対処法
記事監修者

「すごわざ鍵開け達人」として関西・関東のテレビに出演。鍵職人としてのキャリアは12年、現在はエキスパート集団を束ねるマネージャー。親切丁寧な防犯アドバイスにも定評がある。
鍵がささらない・回らないときに、鉛筆が役立つことをご存じですか?
鉛筆の芯には黒鉛(グラファイト)が含まれていて、その粉末が鍵穴の潤滑剤として役立つことがあります。
黒鉛は原子の層がいくつも重っている物質で、層と層を束ねようとする縦の力が弱く、横方向によく滑ります。ですので、鉛筆の芯の粉をシリンダーに入れるとちょうどよい潤滑剤になるのです。
また、黒鉛は乾いた状態で潤滑効果を発揮しますので、油のように部品に残ってホコリや汚れを引き寄せることがなく、鍵穴をある程度、清潔に保ちながら動きを改善できるのが特徴です。
本記事では、鍵が回らなくなる原因や鉛筆を使った正しい対処法を詳しく解説します。また、鍵穴に油を差すなどのNG行動についても触れているので、鍵トラブルでお困りの方はぜひご一読ください。

目次
鍵がささらない・回らないトラブルは鉛筆で改善する?
鍵がささらない・回らないときに、鉛筆を使うと改善する、というのは本当なのでしょうか。
鉛筆の芯の粉を使用するなどという案がどこから湧いてきたのか、不思議に思う方もおられるでしょう。実は、各錠前メーカーがカタログなどに掲載しているメンテナンス方法のひとつで、鍵穴専用の潤滑剤が手元にない場合は鉛筆の粉で応急処置ができます。
各メーカーの説明
鉛筆の芯に含まれる黒鉛は潤滑剤としても有名で、様々な分野で利用される固体潤滑剤のひとつです。黒鉛は炭素(カーボン)が横方向に並んだ層が積み重なった構造をしています。この層は横方向の結合は非常に強いものの、層と層の間の結合は比較的弱いため、圧力が加わると層が横方向へ滑ります。
黒鉛自体がツルツルとよく滑る物質でできているため、鍵穴に入り、接触する部品同士の摩擦を軽減すれば子鍵が回しにくいとか、固くて鍵が開けられない、といった症状が改善することがあるわけです。
特に子鍵の表面とタンブラーには互いに接触する部分があり、こうした接触部分には摩擦が発生します。摩擦が生じ続けると、部品の耐久性や精度が低下していきます(摩耗)。
また、正しい子鍵がシリンダーに入ると、子鍵の形に沿ってタンブラーが動きますが、この動きをコントロールしているのはバネです。バネは錠ケースの中でもラッチボルトを動かすなど大事な仕事をしています。伸び縮みする部品ですが、当然ながら摩擦が少ないほど長持ちします。
これらのことを考慮して、メーカーはあらかじめシリンダーや錠ケース内に潤滑剤を塗布しています。
ですので、鍵のトラブルが潤滑剤の枯渇や経年による汚れの付着・蓄積などが原因であれば、鉛筆を使った応急処置でなんとかなる可能性が高いです。
ただし、効果が一時的だったり、改善が見られない場合は、無理に使い続けずに鍵屋に相談することをおすすめします。潤滑剤が役に立たないとなると、原因がほかにあるか、シリンダーや錠前の寿命である場合も多いからです。
鍵トラブルを鉛筆で改善する方法
鉛筆で鍵のトラブルが解消する、と言われても、すぐにどうしたらいいか浮かぶ人は少ないのではないでしょうか。ここでは詳しい鉛筆の使い方を見ていきましょう。
鍵と鍵穴を掃除する


まず子鍵と鍵穴に汚れやゴミが付着している可能性が高いため、どちらも掃除をしておきましょう。鍵穴は掃除機やエアダスターを使ってゴミを取り除き、子鍵は古い歯ブラシなどで優しく磨きます。
鉛筆で鍵をなぞる

刻みキーであれば鍵のギザギザ部分、ディンプルキーであれば窪みやグルーヴ(真ん中にある溝)を鉛筆で軽くなぞっていきます。鉛筆は芯が柔らかめのBや2Bがお勧めです。シャープペンで代用することも可能ですが、シャープペンの場合は芯が折れやすいので、折れた芯はシリンダーに入れないようにして下さい。
鍵を数回抜き差しする

鉛筆でなぞった子鍵をゆっくりと数回抜き差しします。これにより、黒鉛の粉が鍵穴内に均等に広がります。
鍵をゆっくり回す
最後に鍵をゆっくりと回して、鉛筆の黒鉛が潤滑剤として機能しているかを確認します。無理に力を入れず、スムーズに回るかどうか確認しましょう。
鍵がささらない・回らないときにやってはいけないこと
当然ながら子鍵が鍵穴にささらない、或いはささるけれども回らない、といったときに、やってはいけないNG行動というものもあります。
鍵の動きが悪いからといって、焦って無理な対応をすると状況が悪化することがあります。鍵穴やシリンダーは精密な構造になっているので、誤った方法で対処すると故障の原因になります。
ここでは特にNG行動のなかでも特に錠前やシリンダーへのダメージが大きいものをご紹介します。
鍵を無理やり操作する
鍵に限ったことではありませんが、無理矢理に操作して施開錠しようとするのはやめましょう。
子鍵が鍵穴にささらない場合、間違った子鍵を差し込んでいる可能性もあります。
鍵がシリンダーにささってはいるが、固くて回しにくいときは無理に回さずに、正しい鍵を入れているか確認して下さい。
シリンダー内で鍵が折れると、取り出すのにまず一苦労します。ペンチやラジペンでシリンダーに残っている箇所を掴み、なんとか引っ張り出せたとしても、回らない子鍵を入れたことでシリンダー内が破損している可能性もあります。
まずは鍵や鍵穴の掃除を行い、それでも改善しない場合は専門家に相談しましょう。
▼関連ページ ▼関連ページ鍵穴専用以外の潤滑剤を使用する
鍵穴専用のものや、鉛筆がないからといってキッチンにある食用油や、金属用の潤滑剤(クレ5-56、シリコンスプレーなど)を吹き付けるのはやめておきましょう。
クレ5-56のようなタイプは、部品の表面に薄い膜を張るため、そこに埃や塵がトラップされていき、だんだんと固まって動作不良を起こします。そうなると、シリンダーを分解して洗浄するか、シリンダーを交換しない限り、動かないということになるのです。
▼関連ページ鉛筆で改善しない症状は?
無論、鉛筆を用いてみても改善しない症状もあります。鉛筆の黒鉛は鍵の滑りを一時的に良くする効果がありますが、子鍵そのものやシリンダーの損傷、ドアの歪みなどが原因の場合は改善しません。
子鍵がシリンダー内でスムーズに動かないときは、原因を正しく見極めることが重要です。
鍵が錆びている場合
子鍵はオリジナルキーであれば洋白、合鍵屋さんで作った合鍵なら黄銅という銅合金(だいたい銅とニッケルが主体)が素材なので、赤錆を発生させることはありませんが、緑錆は発生します。特にディンプルキーは凹みが表面にたくさんある子鍵なので、このくぼみに緑錆が溜まったりします。緑錆は赤錆とは違って母体を侵食せず、逆に母体を保護するタイプの錆ですが、シリンダー内部の部品にとっては異物であることにかわりはありません。
子鍵に錆が発生したことでシリンダーが「正しい鍵」と認識しなくなり、動きが固くなっている場合は、黒鉛の塗布では何も解決できません。黒鉛は炭素なので耐食性が非常に高く、防錆効果もあるのですが、既にある緑青などを取り除いてくれるわけではありません。
子鍵に汚れや錆がついている場合は、とりあえずクエン酸や米酢などで掃除をしましょう。緑錆は酸に溶けやすく、食用の米酢くらいであれば中和する必要もないので、手っ取り早く済みます。
刻みキーのグルーヴ(真っ直ぐな溝)や、ディンプルキーの窪みの錆に汚れが蓄積したりすることも多いため、子鍵は定期的に古い歯ブラシなどで汚れを落とすのが良いでしょう。
ちなみにシリンダー内はよほどのことがない限り赤錆のような致命的な錆が発生しませんが、塩害、砂埃、交通量の多い幹線道路など外部的な汚れに曝されて久しいシリンダーの鍵穴は汚れと赤錆が混ざった色をしていることも多く、そういった状態になるとシリンダー交換をするしか対処法がありません。
▼関連ページストライクの位置がずれている場合
経年劣化で状態が変わってしまっているのは子鍵の形だけとは限りません。特に玄関のドアは地震や災害の影響を最も受けやすい扉ですので、扉が歪んでしまっていたり、蝶番がゆるくなって扉が垂れ下がっている可能性もあります。
鉛筆で鍵の不具合が改善しないときは、ドアを開けたまま鍵を操作したときの動きを観察してみてください。ドアを開けているときは症状が出なかったり、すんなりと鍵を回すことが出来たりする場合は、子鍵やシリンダー側の問題ではなく、錠前のカンヌキがストライクという窓枠側の受座に干渉しているのが原因かもしれません。
ストライクとは、ドア枠側の鍵がかかる部分(デッドボルトとラッチボルトが収まる部分)の金具を指します。ドアの建付けが悪くなり、ストライクの位置がずれると鍵が奥まで入らなかったり、回りにくくなったりします。
この場合、ドアの開閉状態を確認し、ストライクのネジを緩めて微調整することで解決することがあります。ズレが大きい場合は、専門業者に相談するのが安全です。
▼関連ページ鍵そのものが故障している場合
不具合の原因特定は素人には難しいものです。ですので、錠ケースにしろ、シリンダーにしろ、潤滑剤を吹いても改善しない、または数日しか効果が持たない、という場合は錠前の寿命だと考えたほうが良いかもしれません。
特にシリンダーに鍵がささりにくい、というのはシリンダー側が耐用年数を過ぎているなどの理由で寿命を迎えた可能性が高いです。
子鍵が摩耗してギザギザの部分がすり減ったり、ディンプルキーの凹凸に汚れがたまったりすると、シリンダー内のタンブラーが正しく並ばず、鍵が回らなくなることがありますが、子鍵側に特に問題がないのであれば、シリンダーの部品が摩耗している可能性もあります。
また、シリンダー内部の部品、特にシリンダーの動きを錠ケースに伝えるテールピースなどが破損していると、子鍵は正常でも回らないことがあります。
こういったトラブルをスルーして使用を続けていると、ある日突然鍵が空回りして開錠ができなくなったりします。早めに鍵屋に見てもらい、必要であればシリンダー交換を検討しましょう。
鉛筆で改善しなかったらどうすれば良い?
では鉛筆の黒鉛では改善しない症状が出たときはどうすれば良いのでしょうか。
黒鉛を使っても鍵の動きが改善しない場合、原因は潤滑不足ではなく、部品のズレや摩耗、あるいは故障である可能性が高いです。特に、ストライクの位置ズレや鍵の摩耗は、適切な対処をしないと症状が悪化することもあります。
ここでは、鍵のトラブルを根本から解決する方法を見ていきましょう。
ストライクの位置を調整する

上述したようにドア枠側のストライクの位置がずれていると、鍵が固い、回しにくい、という症状が出ます。まずはドアの開閉状態を確認し、ストライクのネジを緩めて少しずつ位置を調整してみましょう。

位置を調整する際は、ストライクを留めているビスは緩めるだけに留めて、抜き取らないようにして下さい。ストライクに裏板が一緒についていることがあり、ビスを抜いてしまうとサッシ内に落ちてしまいます。
逆にドアが垂れ下がっているような場合は、丁番起こしを使ってドアをまっすぐにしたり、丁番のネジを閉め直すなどする必要があります。

鍵穴専用の潤滑剤を使用する

鍵の動作が不調で、鉛筆の黒鉛でもあまり効果が見られなかった場合、鍵穴専用の潤滑剤を使用してみて下さい。もし可能であれば、パーツクリーナー(ブレーキクリーナーなどの名前で販売されていることも)でシリンダーを洗浄してからがベストなのですが、シリンダーを取り外さずにパーツクリーナーを使用すると、汚れが錠ケースに流れてしまうこともあるので吹き付けすぎに注意が必要です。
鍵穴専用の潤滑剤は、基本的にメーカーが推奨している潤滑剤を使うのがベストです。メーカーごとに使用している主成分が違う、というのもありますが、そのメーカーのシリンダーによく合う成分を選んでいる筈なので、潤滑剤が原因の不具合が起こりにくいでしょう。
ただ、美和ロックの3069のように、スプレーすると白い粉末が残るタイプは、雨などで濡れたシリンダーには使用しないようにして下さい。また、過度にスプレーを吹き過ぎると、粉末が固まって動作不良を起こすこともあります。
心配な方は、スプレーを直接鍵穴に噴射せずに鉛筆のときと同じように、子鍵に吹き付けてから鍵穴に抜き差しすると良いでしょう。
鍵を交換する

子鍵そのものが摩耗していたり、シリンダー内部の部品が故障していたりすると、潤滑剤を使っても根本的な解決にはなりません。特に、刻みキーの鍵山がすり減っている場合は、新しいスペアキー(オリジナルキーがベスト)を使ってみて、改善するか試してみる必要があります。
また、鍵が固いというトラブルにはいくつかの要因が考えられるため、ドアを開けて鍵を回しても同じ症状が出るのか、室内側のサムターンも具合が悪いのか、といったことを確認しましょう。
ドアを開けたままなら問題なく鍵が回る場合、先述したストライクとデッドボルトの干渉が疑われますが、鍵穴からの操作が固い場合はシリンダーの寿命かもしれません。
また、鍵穴・サムターンどちらを操作しても鍵がかたい場合は、錠ケースの具合が悪いのかもしれません。早めに鍵屋を呼んで、状態を見てもらうようにして下さい。
鍵がささらない・回らないトラブルは鍵猿にお任せください!
鍵が突然ささらなくなったり、回らなくなったりすると焦りますよね。
鍵のトラブルは掃除と潤滑剤で改善することもたくさんありますが、根本的な原因が摩耗や故障の場合、自分だけでは解決できないこともあります。鍵の操作が困難になってきたら、鍵のプロである鍵猿にご相談ください。
鍵猿ではコールセンターでご依頼をお聞きし、現場近くにいる経験豊富なスタッフが駆けつけます。
鍵のトラブルは放置すると悪化して日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。早めに調査をご依頼いただいた方が、修理などで対応できる可能性もあります。ぜひ気軽にご相談ください。
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