TSAロックのスーツケースの鍵は交換できる?開かないときの対処法も紹介
この記事でわかること
・TSAロックとはどういったものか
・スーツケースのTSAロックが開かないときの対処法
・スーツケースの鍵の解錠にかかる費用
記事監修者
「すごわざ鍵開け達人」として関西・関東のテレビに出演。鍵職人としてのキャリアは12年、現在はエキスパート集団を束ねるマネージャー。親切丁寧な防犯アドバイスにも定評がある。
2001年の同時多発テロ事件以来、アメリカで旅行するときに欠かせないと言われてきたスーツケースのTSAロック。「戻ってきたスーツケースの鍵が壊れていた!」或いは「旅行前に故障したのか鍵が開かない!」といった経験はありませんか?
鍵が開かないと旅行や出張の予定が狂ってしまうため、何とかスムーズに対処したいですよね。今回は、TSAロックの基礎知識を踏まえ、鍵が開かないときの対処法や鍵の交換方法などを解説します。
アメリカ運輸保安局、Transportation Security Administration、或いはTravel Sentry® Approved の略になります。Travel Sentry(トラベル・セントリー)は運輸保安局が認可する錠前の管理・運営をしている企業で、2003年に創立されました。Travel Sentry Approved とはトラベル・セントリーが認可する、という意味になります。どちらにしても、米運輸保安局に認可された錠前、という意味になります。
TSAロックと呼ばれるスーツケースの鍵は空港での保安検査をスムーズに執り行えるようにするための鍵です。開かなくなってしまった鍵を下手に開けようとするとスーツケース自体を傷めてしまったりしますので、無理せずに鍵屋にご相談下さい。この記事では、鍵開けを依頼すべきシチュエーションなどについて説明します。
目次
スーツケースのTSAロックとは?
TSAロックとは、アメリカ運輸保安局が認定したスーツケースの鍵のことで、独特の赤いひし形、レッド・ダイアモンドのマークが描かれています。スーツケース類を所有している人でこれを見たことがない人はいないのではないでしょうか。
TSAロックの特徴は、空港の検査場で検査員が所持するマスターキーで解錠できるという点です。「鍵が勝手に解錠されたらダメなのでは」と思うかもしれませんが、アメリカでは同時多発テロ以降、アメリカの空港から出発する荷物全てをX線でスキャンして検査することが義務付けられ、検査員は不審物ありと判定された荷物を開けて搭乗客が事前に預けた荷物に爆発物や危険物が隠されていないか確認しなくてはならなくなりました。
当初、運輸保安庁は乗客にスーツケースを解錠した状態で預けるように促していましたが、施錠されたままの荷物が多く、検査員は鍵を壊して検査する、ということが続いていました。検査員は荷物に鍵がかかっていても破壊開錠してチェックすることが認められています。鍵は壊れますが、検査員は責任を問われないわけです。
しかし、壊された鍵は当然ながら鍵としての役割を果たすことができなくなり、乗客の荷物が旅先で盗難の危険にさらされたりします。保安局には苦情が相次ぎ、対策が必要になりました。そこで、トラベル・セントリーが設立され、検査員が所持するマスターキーで安全に鍵を開けられるTSAロックのシステムが開発されたのです。
TSAロックが付いたスーツケースなら、鍵をかけて預けても、検査対象になった際に検査員の持つマスターキーで解錠できます。鍵をかけずに預けて中身が紛失する心配も、スーツケースの鍵が壊れることもありません。検査後には検査員がマスターキーで再び鍵をかけるため、安心して荷物を預けられるというわけです。
TSAロックが必要な旅行先
TSAロックは長い間、「アメリカの空港から出発するすべての旅行で必要」と言われてきました。日本からであれば、アメリカ旅行からの帰りや、アメリカの空港を経由する場合、或いはアメリカ本土でなくてもハワイ、グアム、アラスカといったアメリカ領に旅行したときなどを含むとされていました。
しかし、トラベル・セントリーの2018年の報告では、アメリカ全土の452空港に加えて日本、カナダ、オーストラリアなど計650の空港がTSAシステムを採用しました。
さらに、30カ国の空港でTSAロックの使用が有効であるとしており、2019年で50カ国、2022年で55カ国、そして2024年現在では68カ国で計750の空港にて有効としています。
TSA (米国運輸保安局) 職員は空港の保安職員の一部です。保安職員には空港の手荷物検査を容易にするための安全なツールが提供されます。これは、Travel Sentry System が導入されている米国の 450 空港を含む世界中の 750 以上の空港で実施されています。つまり、TSA 承認のロックが付いたバッグは、損傷することなくロック解除、検査、再ロックできます。
トラベル・セントリー公式サイトより
2018年11月
トラベル・セントリー公式サイトより
システムは年間に乗客20億人をカバーしています。650の空港で使用され、世界で30カ国に及んでいます:アメリカ、カナダ、パナマ、ブラジル、ドミニカ、ドイツ、デンマーク、オランダ、フィンランド、ベルギー、ノルウェー、チェコ、リトアニア、スエーデン、ラトヴィア、エストニア、オーストリア、スイス、ハンガリー、マルタ、トルコ、アラブ首長国連邦、イスラエル、アイボリーコースト、トーゴ、中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド
北アメリカ大陸だけでなく、ヨーロッパ、中国、韓国そしてオセアニアの諸国が採用しているということは、日本人にとって多くの渡航先がTSAシステムを採用しているということです。今では、どこへ行くにせよ、TSAシステムに対応する鍵付きのスーツケースを持つほうが「無難」です。
市場ではTSAロックのついていないスーツケースの方が見つけにくいかもしれないですが、TSAロックはアメリカにしか必要がない、という通念は更新する必要がありそうです。
ただし、日本の有名なバッグメーカーであるエース株式会社が各ブランドのサイトで促しているように、自分で渡航先や利用する航空会社を確認することは大事です。
利用する航空会社などによっては、解錠したまま荷物を預ける必要があるかもしれません。旅行前には必ず利用する空港や航空会社が発表している注意事項などに目を通しておきましょう。
TSAロックが開かないときの対処法
スーツケースは空港で様々な扱いを受けるため、運搬中に故障したりして鍵が開かなくなるものもありますが、TSAロックも例外ではありません。鍵が開かなくなれば必要なものが取り出せず、旅行の予定が狂ってしまうこともあるため、TSAロックが開かなくなったときにどうすれば良いのか、具体的な対処法を知っておきましょう。
スーツケースメーカーに相談する
TSAロックが開かなくなったら、まずはそのスーツケースのメーカーに問い合わせてみましょう。
メーカーによっては、不具合が起きた場合に修理や鍵の交換などのアフターサービスに対応していることもあります。
また、トラベル・セントリーは米空港で検査されたTSAロックの紛失・破損に関しても、メーカーに問い合わせるように指示しています。アメリカの空港で検査されたラゲージには検査票(Notice of Baggage Inspection)が入っていますが、これがあればTSAロックシステムに参加しているメーカーは、無料で鍵を交換する、としています。
交換にしても修理にしても、メーカーの対応なら間違いがありません。検査票が入っていなくても保証期間中なら無料で修理などをしてもらえることもあるでしょう。うまくいけば元通りに使えるようになる可能性が高いので、まずはメーカーへの問い合わせをしてみるのがベストです。
スーツケースはシリンダー錠を採用しているところと、そうでないところ(コンビネーションロックしか採用していない)があり、後者はコンビネーションロックの番号忘れなどによるトラブルが起きた場合、修理という名目で引き受けることが多いようです。
シリンダー錠を採用しているところは、合鍵の販売があり、多くがオンラインで問い合わせたり、発注したりできます。子鍵を紛失して困っているとき、時間的に余裕があるようでしたらメーカーに新しい鍵を作成して貰うのが良いでしょう。
オンラインで問い合わせができるのは、下記の9ブランドです。
ACE/プロテカ | シリンダー錠あり |
サムソナイト、Hartmann | シリンダー錠あり |
ロジェール | シリンダー錠あり |
ALI(アジアラゲージ) | シリンダー錠あり |
株式会社トリオ (innovator、clooney など) | シリンダー錠あり |
リモワ | コンビネーションロックのみ |
ゼロハリバートン | コンビネーションロックのみ |
デルセー | コンビネーションロックのみ |
アメリカンツーリスター ※修理はサムソナイト | コンビネーションロックのみ |
アフターサービスの有無や修理内容、修理期間や費用など詳細は各メーカーで異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
なお、メーカーへ問い合わせる場合、曜日や問い合わせ方法などによっては返答までに時間がかかることもあります。修理のためにスーツケースを預けなければならないことも多く、送付や返却にも日数がかかると想定しましょう。
旅行まであまり時間がない、或いは旅先で緊急に修理や合鍵が必要なときは、所要日数を確認するか、ほかの方法を考えたほうが良いでしょう。
空港内のリペアサービスを利用する
今まさに旅行中で、空港にいるときに鍵が開かなくなったという場合は、空港内にあるリペアサービスを利用するという方法もあります。
リペアサービスはスーツケースの修理や解錠などを行うサービスショップで、鍵の開錠・合鍵作成を依頼することができます。
日本国内では羽田空港と成田空港にスーツケースの鍵開けができるリペアショップ「リアット」があり、成田空港の手荷物一時預かり所では、鍵の開錠や合鍵作製、バゲージラッピング(大切な荷物等をストレッチフィルムで巻き、破損や盗難を防止する)サービスなどが可能です。
成田空港 | 羽田空港 |
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リアット成田空港第1ターミナル店 | リアット羽田空港第2ターミナル店 |
成田国際空港振興協会 手荷物一時預かり所 第2ターミナルビル3階出発ロビー(北側) | 手荷物一時預り所 第2ターミナルビルB1F ターミナルロビー(北側) |
自分で開けられないか試してみる
スーツケースの中には、工夫次第で自分で開けられるものもあります。手間はかかりますが、自分で開ける方法を3つ紹介するのでどうしても試してみたいという方はチャレンジしてみて下さい。
なお、自分で無理に開けた場合、鍵や部品が破損するなど状態がさらに悪化してしまう恐れもあるので注意してください。
ダイヤル式(コンビネーションロック)であれば一つずつ試してみる(総当り)
ダイヤル式のTSAロック、あるいはダイヤル式TSA南京錠の暗証番号を忘れてしまったという場合は、番号を1つずつ試してみるという地道な方法もあります。いわゆる「総当たり」と呼ばれる手法です。
数字の組み合わせと聞くと途方もなく手間がかかると想像しがちですが、TSAロックは3桁のものが多いため、暗証番号は000から999まで全部で1,000通りです。001、002、003と1つずつ試していったとしても、何日もかかるような作業ではなく、30~40分ほどで終了します。
ダイヤル式のものは子鍵で開けるタイプとは構造が違いますし、スーツケースのTSAロックには非常解錠用のシリンダーもついていないことから、トラベル・セントリーも確実な開け方としてこの総当りを推奨しています。
※ダイヤル式にも鍵穴がついていますが、これは検査員がマスターキーを使って解錠するための鍵穴です。このため、鍵穴のすぐ下にTSA007といった文字が刻印されています。鍵穴しかないものはシリンダータイプですが、鍵穴と3桁のダイヤルがついている場合は、ダイヤル式になります。
なお、ダイヤル式には暗証番号を変更できる可変タイプがありますが、何かの拍子に変更時に使うスイッチが入ってしまい、番号が知らない間に変わってしまうということが多いので、元々の暗証番号の近くを探ってみて下さい。
ダイヤルのタイプによっては、番号が合っていると隙間ができるなど、変化がわかりやすいものもあるので、注意深く確認しながら作業してみると良いでしょう。
ただし、どの組み合わせでも開かない場合は鍵そのものが壊れている可能性があります。力任せに鍵を壊そうとしたりせずに、スーツケースの修理業者か、鍵屋に解錠して貰うのがベストです。
別の鍵で開けてみる
シリンダータイプの子鍵を紛失してしまった、または鍵を使っても開かないという場合は、別のスーツケースの鍵を使って開くかどうか試してみましょう。
鍵は鍵穴と連動するものでしか開かないというイメージがありますが、実はそうとは限りません。TSAロックは基本的にすべて空港の検査員のマスターキーで開けられるため、まれにほかのTSAロックの鍵でも開くことがあるのです。必ず開くわけではありませんが、ほかにTSAロックのスーツケースがあれば試してみる価値はあります。
ファスナータイプの開け方
ボールペンの先端など、尖った部分をジッパー(ファスナー)の中心部分に強く押し当てると、先端がファスナーの中に潜り込みます。
そして、ボールペンをそのまま横にスライドさせると、ファスナー部分を開けることが可能です。
さらに、金具部分を持って元の方向にスライドすれば、ファスナーを閉じることもできてしまいます。
逆に言えば、盗難や何らかの混入の被害に遭っても気づかない可能性がありますので、注意が必要です。
鍵屋に鍵開けや修理を依頼する
メーカーへの相談が難しく、自分でも開けられない場合は「鍵屋の鍵猿」にお問い合わせください。
鍵屋の鍵猿は確かな技術力を持つ鍵のプロであり、鍵開けや鍵関連の修理を安心してお任せいただけます。全国各地に拠点を展開しており、トラブルが起きたときは最寄りの拠点から専門知識を持つスタッフが駆け付けるため、スピーディーな対応が可能です。
まずはスーツケースのメーカーや鍵の種類などをご確認いただき、ご相談内容と合わせてお電話ください。ホテルなど宿泊先にお伺いすることも可能です。
なお、鍵開けの費用は8,800円(税込)~ですが、鍵の種類やご依頼内容などによって異なるため、現場で実際に鍵を拝見し、お話を伺ってお見積りを行います。
保険が適用されないか確認してみよう
空港では繁忙期などにスーツケースが破損して届くことがあります。コンベヤーやフォークリフトへの積載時にどこかに引っかかったり、挟まったりして鍵だけでなくスーツケース本体も破損してしまうことがあります。
もし、カルーセルから引き取ったスーツケースの本体(キャスターなどの突起部分を除く)が壊れている場合は、税関を抜けてしまう前に「破損証明書(Damage Report)」を発行して貰えるか、補償を受けられるかどうか空港員に相談しましょう。
破損証明書は、預けている間にスーツケースが壊れ、空港でそれに気付いたことを証明する書類で、これがないと航空会社の補償を受けることができません。また、補償内容は航空会社によって違うので、よく確認するようにして下さい。
鍵などが壊れてスーツケースを閉められない、実質的に使うことができないといった場合は、代替のスーツケースを借りることができたりします。スーツケースを受け取ったら壊れている箇所はないか確認し、破損に気付いたらすぐに空港員に連絡しましょう。
破損証明書は税関を通り抜けてしまうと発行して貰えなくなることが多いので、スーツケースの状態は引き取ったときにすぐに確認すべきです。
また、海外旅行保険などに加入している場合、旅行中のスーツケースなどの破損や盗難に対して補償を受けられることがあります。海外旅行保険に加入した覚えがなくても、クレジットカードの保険内容に携行品損害保険が付帯している場合も多いので一度確認してみましょう。
なお、関空では要らなくなったスーツケースの引き取りをしています。破損で空港からスーツケースを持ち出せなくなり、他の鞄に荷物を移動させたなどの理由でスーツケースの処分に困ったら問い合わせてみるとよいでしょう。窓口は第一ターミナルの案内カウンターです。
TSAロックの鍵は交換できる?
TSAロックが壊れて鍵が開かなくなった場合は、ロックを丸ごと交換することも可能です。とはいえ、自分で正しく交換するのは難しいので、実際にスーツケース専門の修理業者やリペアサービスなどに依頼して交換作業を任せることになるでしょう。
なお、スーツケースの鍵交換に対応可能な鍵業者はありますが、TSAロックの交換に対応可能かどうかは業者によって異なるため、コールセンターなどで確認してから依頼する必要があります。また、交換するまえに鍵を開けなくてはならない場合は、鍵開けの費用と交換の費用双方が必要になります。
出張専門の鍵屋のなかには出張費が別途かかったり、時間帯によっては殆どの鍵屋が深夜早朝料金を設けていますので、全部含めてどれくらいかかりそうなのか、電話での問い合わせの時点で聞いておくと良いでしょう。
無論、実際にいくらかかるのかはスタッフが現場についてみないとわかりませんが、現場でも見積書をちゃんと作成してくれているかどうか、見積書の金額で最終かどうか、といったことをしっかりと確認して下さい。
費用がそこそこかさむとスーツケースを買い直した方が良いのでは?と思うかもしれませんが、スーツケースで旅行をする方の殆どが思い入れのあるスーツケースを利用しています。
また、安価なスーツケースもあるにはありますが、サイズやメーカーによっては買い換えが現実的ではないものもあります。スーツケースの値段や思い入れ、使用期間などを総合的に考え、TSAロックを交換するかどうか決めることをおすすめします。
スーツケースの鍵開けはプロにご相談を!
スーツケースの鍵が開かなくなった場合、無理に開けようとするとさらに状態が悪化してしまうこともあります。
大切なスーツケースの場合、またはメーカーから合鍵を取り寄せる時間がない場合などは、スピーディーかつ高品質なサービスが可能な「鍵屋の鍵猿」にご相談ください。リモワ、イノベーター、無印良品、サムソナイトなど、幅広いメーカーに対応しております。
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