引っ越し先の鍵交換は必要?費用は借主の負担?
この記事でわかること
- 賃貸の鍵交換費用は誰が負担するのか
- 引越し先の鍵交換が必要な理由
- 引越し先の鍵が新品ではない理由
- 入居後に鍵交換するタイミング
- 鍵交換を業者に依頼した場合の費用相場
- 引越し先の防犯性を高める3つの方法
記事監修者
「すごわざ鍵開け達人」として関西・関東のテレビに出演。鍵職人としてのキャリアは12年、現在はエキスパート集団を束ねるマネージャー。親切丁寧な防犯アドバイスにも定評がある。
賃貸マンションなどに引っ越しする際、鍵が交換されたかどうかをしっかりと確認した方がいい、という話をよく聞きます。今回は、なぜ引越し先の鍵交換が必要なのか、鍵交換は誰がするのか、費用は誰が負担するのかなど、引越しに関わる鍵のことについて詳しく見ていきます。
賃貸物件で鍵交換が必要になった場合、必ず管理会社か大家の許可が必要になります。無断で交換すると後日トラブルのもとになったりしますので、契約書にある連絡先にコンタクトを取ってから鍵屋にご依頼ください。
目次
賃貸物件の引っ越し先の鍵交換費用は借主が負担すべき?
賃貸物件の鍵交換に関しては、よく賃借人の負担による、という契約内容になっています。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には賃貸人の負担とするべき、とありますが、ガイドラインに法的な強制力はありません。
鍵の取替え(破損・鍵紛失のない場合)は入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン P. 21
また、このガイドラインはあくまでも退去時によく起こる「原状回復に関するトラブル」が起こらないよう、契約を結ぶときに利用すべきものですので、貸主と借主の間で既に合意された契約とはまた話題が別と考えるべきかもしれません。
原状回復とは
平たく言うと、借りていた物件は退去時に「元に戻す」必要がある、という賃借人が負う義務です。
どこまで元に戻す必要があるのか、というポイントが長いあいだ借り主・家主間トラブルの原因にもなってきましたが、改正された民法では、原状回復が新品のような状態に戻すことではないと明言されました。
「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」
改正民法第621条
通常の使用による損耗や経年劣化は除外され、賃借人が故意につけた損傷を直す義務もないされ、賃借人が義務を負う範囲がかなり狭められたと言えます。
賃貸借契約では殆どの場合、初期費用と呼ばれる敷金・礼金等々の中に「鍵交換費用」が含まれており、これに同意した賃借人が実際に支払いをした後、管理会社などによって鍵交換が行われ、賃借人が入居するといったかたちになっています。
無論、契約を締結する前であれば、これは賃貸人の責務ではないかと交渉をすることも可能ですし、家主との話し合いの後、鍵交換費用の負担をしなくてよくなった、という例もあるようです。
▼関連ページ引っ越し先の鍵交換は身を守るために必ず行う
引越し先が賃貸であれ、中古の戸建てやマンションの一室であれ、鍵交換はした方がいい、というのが鍵屋視点のスタンスです。
これは主に、鍵交換によって「これまでそこに住んでいた人」を出入りできないようにするためです。
以前暮らしていた人を疑うわけではないのですが、前の居住者が合鍵を作成したうえ家主にそれを返却せず、後日窃盗のために用いた、という事件も少なくありません。そういった事件を防ぐためにも、鍵交換は必要なのです。
戸建ての住宅であれば、賃貸でない限り鍵交換をするかどうかは購入者が決めることができますが、マンションは分譲マンションであってもドアの廊下側は共用部分であったり、管理組合が定めた規則があったりしますので、規約をよく確認し、必要があれば管理組合に鍵交換してもよいか問い合わせておいた方が良いでしょう。
引っ越し先の鍵が新品ではない!鍵交換はされている?
賃貸物件に関してよく耳にするのが「渡された鍵が新品ではない」という戸惑いの言葉です。鍵交換済み、となれば入居者が期待するのは「新しい鍵がついた部屋」なので、その鍵も新品でないとおかしい、というわけですが果たして本当に鍵交換は行われているのでしょうか?
引越し先の鍵が古く見えるのにはいくつかやむを得ない理由もあります。それぞれ見ていきましょう。
鍵をローテーションしている
賃貸マンションでよくあるのが鍵のローテーションです。空き部屋や、管理会社などの在庫にある鍵で交換する方法で、賃貸人や不動産会社にとっては、ほぼ常識的な交換方法です。
使用済みのものをリサイクルしているので、必然的に賃借人に渡される鍵は「若干経年が感じられるもの」になります。
大きな管理会社あるいは不動産会社の物件なら、大量にある在庫を使用した交換になるので、少し安心できますが、同じ建物のシリンダーを使い回ししているようなところは要注意です。
鍵交換について本当に交換されているのか気になるという方は、交換の施行日に立ち会いを希望されても良いかもしれません。
鍵交換を借主に任せている
鍵交換の費用が契約書や特約に書かれておらず、鍵交換費用を支払ってもいない場合は、鍵交換されていない可能性が高いので、必ず管理会社や家主に確認して下さい。
前入居者の敷金から引いているのでは?と思われるかもしれませんが、鍵は破損や紛失がない限り原状回復の対象ではないので、鍵交換費用を敷金から相殺できないことになっています。鍵交換費用が初期費用に含まれるのは、このためです。
また、鍵交換を借主に任せると言っても、それはどういうことなのか、好きな鍵をつけても大丈夫なのか等、細かいところまで確認し、同意した内容については文面で残しておかなくてはなりません。
鍵交換費用を支払ったが鍵交換されていない
鍵交換費用だけ受け取って、鍵は実際に交換していなかった、という場合は交換費用の返還を求めることができます。何をもって鍵交換をしていない証拠とするのか、難しいところですがこういった事実は殆どの場合、なにかをきっかけに露呈するものです。
例えば、空き巣に入られたので新しい鍵と補助錠をつけようと鍵屋を呼んだら、錠前が何一つ変わってないことを知らされた、といったようにです。
もし鍵交換されていない、という明確な証拠がある場合は、弁護士に相談するか、悪質である場合は少額訴訟制度を利用するといった手段を考えても良いかもしれませんが、いずれにせよ、そういった管理会社あるいは家主と付き合い続けるべきかどうかも真剣に検討した方が良いでしょう。
チェンジキーシステムの鍵だった
美和ロックおよびオプナスには「チェンジーキーシステム」を採用した鍵があり(美和ロックLB,LB-Jシリンダー、オプナスMMX、MMXII)、これらを使用するとシリンダー交換は必要なく、鍵の交換だけで済んでしまいます。
具体的にはチェンジキーというリセットするための鍵で前の居住者の鍵の記憶をシリンダーから抹消し、新しい人の鍵を登録するため、新しい入居者であっても同じシリンダーを使い続けることができる、というわけです。
この場合、勿論シリンダー交換は必要ありませんから、鍵交換がなかったと疑うのは早計です。鍵交換がされているかどうか心配なときは、チェンジキーシステムなのかどうか訊いてみましょう。
入居後に鍵を交換することはできる?
入居後にやはり鍵を交換したい、或いは鍵を交換しないといけない、と感じることもあるでしょう。しかしその場合はどうなるのでしょうか?ここからは入居後、鍵を交換したくなる以下の4点について見ていきましょう。
防犯性の高い鍵へ交換したい場合
入居してから玄関の鍵があまり防犯性の高いものではなく、心配なので交換したいと思うこともあるでしょう。
特にディスクシリンダーなどはとうの昔に廃番となって久しいですが、メーカーが廃番を決めたところでユーザーがそれを使用し続けるのを止めることはできません。管理会社や家主が鍵について詳しいとも限らず、古いものを使い続けている可能性もあります。
もし、鍵について心配なことがあったら、一度鍵屋に相談してみて下さい。現状、どんな鍵がついていて、防犯性はどんなものかなど、現地を見てご説明しますし、防犯性の高い鍵にするときはどんな商品が取り付けられて、いくらかかるのかなど、お見積りを出すこともできます。
それを元に、貸主や管理会社と話し合って頂くとスムーズにことが運ぶかもしれません。ただしこの場合、鍵交換が認められても既に入居時に交換されている場合は、借主側の負担となってしまうかもしれません。古い錠前は退去時の原状回復のために保管しておいて下さい。
鍵が破損した場合
入居後、鍵がある日突然壊れてしまう、というのも全くないわけではありません。やはり鍵というものも経年で劣化していくものですし、鍵が壊れそうな予兆を示していなかったとしても、特に不自然なことはありません。
鍵は急に不具合が生じて正常に動作しない、ということが起こりうる精密機器です。経年による損耗の修繕などは管理者側の義務ですので、貸主が交換し、費用も負担せねばなりません。
鍵を紛失した場合
鍵を紛失した場合は、賃借人の過失ということでよほどのことがない限り、自費での鍵交換となります。また、鍵を紛失してしまった際には必ず、
- 管理会社、家主へ連絡
- 必要があれば管理人や家主などにスペアキーを借りて鍵を開けて貰う
- 警察に行って「遺失届」を出す
ということも必要になります。
管理会社や大家と連絡がつかず、どうしても鍵開けが必要な場合は鍵屋を呼んで下さい。
鍵が原因で空き巣に入られた場合
もし鍵交換が実行されておらず、それが原因で空き巣に入られた場合は、貸主負担で交換して貰える可能性があるかもしれません。
ただ、鍵交換そのものが何ら法的拘束力のない「家主が好意で行うもの」という、単なる「サービス」として新入居者のために行う作業であるという解釈もあり※、そういった観点からは鍵交換は貸主の義務ではないので、責任を問うことはできない、と考えることもできます。(※ただし家主には民法第606条に定める「修繕義務」もあります)
いずれにせよ、「鍵交換をした」と貸主が明言しており、実際に交換が行われているとしても、同じ建物の同一シリンダーの使い回しである可能性がないわけではありません。
古い建物であればシリンダーも古い可能性がありますし、単に「交換されたから」といって安心できない部分があるのは否めないでしょう。
引っ越し先の鍵交換費用はいくら?業者に依頼した時の相場
鍵の交換費用というものは、交換作業代と部品代(シリンダー価格)が合わさったものです。ですので、比較的安価で防犯性の高いロータリーディスクシリンダーなどですと¥15,000~¥20,000ほどになります。
弊社の場合は、鍵交換の費用が¥11,000+部品代となっていますので、部品代に美和ロックのU9(住宅でよく使用されるギザギザ鍵)あたりを想定すると上記と似たような価格になります。ディンプル錠にする場合は、シリンダーの価格が上がりますので、もう少しコストが高くなります。
【その他の鍵交換の例】
- ディンプル錠 ¥25,000~¥35,000
- プッシュプル錠 ¥10,500~¥80,000
- 引き違い戸錠 ¥25,000
- カードキー ¥35,000~¥75,000
引っ越し先の防犯性を高める方法
引っ越し先の防犯性については、つまるところやはり自分自身で確認し、対策していくしかない、という側面があるというのがわかってきました。
管理会社や家主が防犯設備や鍵について詳しければよいのですが、そうとも限りません。結局は自衛するしかないのかもしれません。
ディンプルキーへ交換する
玄関の鍵は、賃貸・分譲マンションなどは元々ついていたものを取替えられないなど、制約がある可能性もあります。
ベストは玄関鍵をディンプルキーに交換することですが、それが不可能な場合は補助錠でハイセキュリティシリンダー付きの面付け錠を取り付けたり、扉に穴を開けられない場合は穴あけの必要がない補助錠を使用するなど、違うアプローチが必要かもしれません。
▼関連ページワンドア・ツーロックにする
ディンプルキーを取り付けることができたら、追加で補助錠をつけてワンドア・ツーロックにすることを忘れないようにしましょう。
空き巣は侵入するのに時間がかかる家屋を嫌がります。補助錠やドアガード、ドアチェーンを併用することも有効です。
▼関連ページ勝手口・窓の鍵も強化する
窓の鍵や、戸建てであれば勝手口の鍵のことも忘れてはいけません。
マンションも、高層階はともかく4 階くらいまではベランダからの侵入経路を注視しておくに越したことはありません。窓ガラスにはクレセントだけでなく補助錠をつけたり、クレセント錠そのものに鍵をつけることも検討してみて下さい。
また、マンションは勝手口がありませんが、各階の廊下から非常階段へ出るルートなどが大変杜撰に管理されていることも多々あります。
玄関はオートロックにしているのに、屋外から非常階段を使って建物内に容易に侵入できるのであれば意味がありません。建物内の防犯設備の見直しや、鍵の取り替え、アップグレードなど、できることはしておきましょう。
▼関連ページ引越し先の鍵交換は鍵屋鍵猿にお任せください
マンションなどでは管理会社が懇意にしている業者などに依頼がいくものですが、もし借主として鍵の増設や交換をする権限がある、という方は、ぜひ鍵屋「鍵猿」にご相談下さい。適切な錠前やシリンダーのご提案は勿論のこと、防犯対策についてのご相談も可能です。
マンションでの防犯、特にエントランス、玄関、廊下、窓に関して知りたいことや気をつけるべき点など、何でも気軽にお訊き下さい。
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